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大日乃光






大日乃光

2016年10月13日大日乃光2156号
百年千年先の未来に向けて祈りの込められた多宝塔鎮壇作法

熊本震災復興を祈る「柴燈大護摩祈祷」
 
来たる十一月三日には奥之院開創三十八周年大祭が執り行なわれます。

九時より「飛龍旗小学生すもう大会」「開白法要」「諸堂巡拝」と続きますが、祈りの中心となるのは、何と言っても「柴燈大護摩祈祷」です。

特に今年は熊本地震でお亡くなりになられた方々の追悼、そして更には熊本復興の祈りを込めたお参りでもあります。

震災発生から半年が経ちました。今では地震に関するニュースも少なくなっておりますが、被災者の方々にとってはまだまだ復興とは程遠い状態も多く見受けられます。元の生活に戻れていない人もたくさんおられます。

れんげ国際ボランティア会(アルティック=ARTIC)では四月十七日から支援活動を続けており、現在は仮設住宅への支援に移っています。これからもこの活動は続けてまいります。

その一方で、直接手足を動かして支援活動をするだけではなく、お亡くなりになられた方々の供養や復興祈願のために手を合わせて祈ることも、当山の大きな役割だと思います。

日本は普段、自然の恵みや恩恵を多く受けている反面、天災というものも避けられない土地柄です。「困ったときはお互い様」という言葉があります。今回の地震を過ぎた事、他人事などと思わず、皆さんの周りの人のためにも手を合わせていただきたいと思います。

全国からお参りされる信者の皆様が真剣に祈られる事によって、これまで以上に皇円大菩薩様のお慈悲のお力が皆様の周りに広がっていくに違いないと信じております。
 
信仰の原点に立ち返る八百五十年大遠忌記念事業
 
さて、平成三十年の皇円大菩薩様御入定八百五十年大遠忌まで、残り二年をきりました。その時を迎えるにあたり、多宝塔建立の準備も着々と進んでおります。

大遠忌は五十年や百年に一度、宗祖や先達の教えや願いに立ち返り、お寺の進むべき道や自らの生き方を見つめ直す節目の年にあたります。

皇円上人の弟子にあたる浄土宗の開祖、法然上人は平成二十四年に八百年大遠忌を迎えられ、京都の浄土宗の総本山、知恩院には大勢の参拝があったと伺っております。

蓮華院誕生寺の御本尊、皇円大菩薩様は比叡山の功徳院で御入定されたことが『仏教大辞典』などに記されています。

その際、遠州(静岡県)の桜ヶ池の水を掌にして、「龍神になって永き生命をもとに、後の世の人に尽くさん」と遺言を残されました。その時龍巻が起こり、龍に身を変えられた皇円上人が桜ケ池に入られたと言い伝えられています。

衆生済度のため龍に身を変え、五十六億七千万年後の弥勒菩薩の出世を待ち、御入定された年が嘉応元年(西暦一一六九年)であります。

その年から八百五十年後が平成三十年にあたります。この大事な年を迎えるため、当山でもさまざまな行事を執り行ってきました。

三年前には信者の皆さんと桜ケ池、善光寺、昨年が比叡山、西大寺と有縁の地を巡拝してまいりました。
 
五重塔と対をなす多宝塔は、祈りの力と匠の技の集大成
 
そして今年に入り、御本尊皇円大菩薩様のご意思を受けて、貫主様が多宝塔建立にとりかかられました。
現在の本堂を中心に東側に五重塔、その対の西側に多宝塔が立ち並ぶ予定になっております。五重塔が慈悲の世界を表しているのに対し、多宝塔は知恵の世界を表現しています。この両方を一つの境内に納めているお寺は、全国でもめずらしいことと伺っております。

皇円大菩薩様のご意思と貫主様の祈りのお力、それに呼応した多くの信者の方々の助縁、そして大変な技量を持った人々の技術力によって、多宝塔建立への道がひらかれました。

平成に入ってからでも本院は五重塔、南大門、そして五重塔周辺の造園工事などで整備されました。これらの建物は全て匠社寺建築社様、今村九十九大仏師、植芳造園の井上剛宏様など、現代の名工の方々の手によってご本尊様の意思を形に現して頂いています。

以前、宮大工の方が書かれた本を拝読させて頂いた時に、お寺の建造物の中でも多宝塔は特別造るのが難しいように書いてありました。五重塔は各層の作りがほとんど同じなのに対し、多宝塔は下層が四角形で上層が円筒形になっています。その上層の円筒形にするのがとても苦労するそうです。
 
地鎮祭で修した「土公供作法」
 
これら匠の努力に加えて、私たち僧侶は滞りなく安全に作業が進むように、節目の儀式を担当します。

特に今回は幸いな事に、私は二月に京都の種智院大学で「地鎮 鎮壇 上棟式」の伝授を受けておりましたので、貫主様のお手代わりとして、この作法に基づく修法をさせて頂きました。こういったタイミングで、多宝塔建立に必要な伝授を母校でお受けできたのは、何とも有り難いご縁のお陰と思います。

去る六月大祭の折りに、八百四十八年御恩忌大法要後に地鎮祭が執り行なわれました。真言宗の場合は「土公供」という名の儀式になります。

古来より大地は〝地天〟という神様のものとされています。その大地を使わせて頂くためにさまざまなお供えものをして、地天を供養いたします。また災いを退け、仏道への精進をより高め、土地を清浄にするともいわれています。

当日は雨にみまわれました。「雨降って地固まる」とことわざにもありますように、雨が降ると土地が固くしまり、安定した状態になるという意味からきているそうです。そういう意味では土公供作法を修法する中に雨が降ったということは、縁起のいい事のように感じました。

そしてこの日(六月十三日)から三ヶ月半後の八月三十一日まで、熊本では震度五以上の揺れが、文字通り鎮まりました。何とも有り難い事でした。

私のまだ拙い祈りであっても、偉大なる皇円大菩薩様の御霊力が、貫主様の祈りを通じて現れた一つの証であったと思います。
 
準ご縁日に鎮壇具納め式を執行
 
それから三ヶ月が経ち、建物を支える基壇ができあがりました。それに合わせて、九月二十三日には準ご縁日法要後に、鎮壇具が基壇の中央部分に安置されました。

鎮壇具とはお堂や塔を建立する際、その建物の力が発揮できるよう、また安全を願い地下に納めるものをさします。

今回は五宝・五香・五穀・五薬を中に入れた瓶を五色の壇線で結び、仏像などと併せてお納めしました。これも二十年前に貫主様が修された五重塔の時と全く同じだったそうです。

その大切な作法を、貫主様の名代として務めさせて頂いた事は一生忘れられない事となりました。

多宝塔が完成すると、改修や修復などがないかぎり、何十年、何百年と鎮壇具を拝見することはできなくなります。

そのときにどういった願いを込め、意味を込めて多宝塔が建立されたのかを未来の人々が感じられる事でしょう。

そしてあらためて、皇円大菩薩様の御教えに立ちかえり、私達自身の生き方を見つめ直すきっかけになることと、夢を未来に広げております。合掌




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