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大日乃光






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2017年03月30日大日乃光第2171号
新年度を迎えるに当たり、より良い人間関係の在り方を示す

子どもの一生に大切な言葉
 
いよいよ四月となり、子供たちにとっては新入学・新学年の時期となりました。また新社会人にとっても新たな職業人としての人生のスタートでもあります。この時期を寿ぐように日本各地で桜が満開を迎えている事でしょう。
 
この時期になると新入学の新一年生を持つ親御さんや祖父母の方々にお願いしていることがあります。それはこれから行く小学校、そしてそこで出会う担任の先生について、子供たちにぜひ伝えて頂きたいことがあります。
 
「あなたがこれから行く小学校は輝かしい伝統を持つ学校で、素晴らしい先生方がたくさんいらっしゃいます。担任の〇〇先生は、それはそれは素晴らしい先生ですよ。あなたは運がよく幸せだね!」と、子供たちに元気を与えるように語りかけて頂きたいのです。
 
子どもの学習意欲は傷つきやすい
 
私の父、つまり先代の故真如大僧正様は佐賀の東妙寺におられた頃、子供会や少年研修館、また小学校・中学校のPTA会長などを通じて子供たちの教育には大変熱心でした。
 
その経験から、新入学の保護者の皆さんには先のように、その小学校や担任の先生をけなすことなく逆に大いに褒めて欲しいと常々言っていました。それは、教育の効果は子供たちが先生を尊敬するところから始まるとの信念に基づいていたと思います。

ともすると、近年は先生より保護者の方の学歴が上であったり、人生経験が豊富であったりします。そのことから保護者自身が先生を尊敬するということが少なくなっているのは事実です。
 
しかし仮に、子供たちの前でその学校や先生に批判的であったり、「あ~○○先生が担任なの。それは不運だね」などと言えば、その子は途端にやる気をなくし気力も失せてしまうことでしょう。
 
ずいぶん昔の事ですが、父が旧制中学校に入学した時、二つ年上の伯父から「英語の先生は誰?」と聞かれて「○○先生」と答えると、「お前は運が悪いな!あの先生はつまらんぞー」と言われ、そのお陰で遂に英語が好きになれず、成績もあまりふるわなかったそうです。
 
先生方の気持ちを代弁
 
このような話を先代から聞いてきましたので、私自身が自分の母校のPTA会長を務めた時、入学式で保護者のみなさんに次のようなことを伝えました。
 
「子供たちには、担任の先生の悪口は決して言わないでください。逆にその先生を全く知らなくても『○○先生が担任なの!それは良かった。あの先生は良い先生だよ。あなたは運がいいよ』と伝えてください。もし万が一、何か不都合なことがあったらその不満を担任の先生に直接言うのではなく、ましてや子供に言うのではなく、私たちPTAの役員や教頭先生、校長先生に伝えて下さい。そのことがひいてはあなたたちの子供さんのためにもなります。このことはぜひお約束下さい」
 
すると入学式の後、校長先生がわざわざ私のところに来られて、
「先ほどは私たちが言えないことを、よくぞ仰って下さいました。本当にありがとうございました」と、しみじみとお礼を言われたのがつい最近の出来事のように思い出されます。
 
プラス志向が「功徳」へと繋がる
 
また、これから新社会人として会社に勤める人は、その会社から多くの事をして貰おうと思わずに、逆にこれから自分はこの会社にどんな貢献が出来るのかを真剣に考えてみて下さい。
 
よしんば自分の働きが給料に見合っていない、自分は給料以上に働いている、と思われるならば、それは未来のための良い功徳を見えないところに積ませて頂いていると考えて下さい。その見えないところに積み上げた功徳は必ずや、将来あなた自身に返ってきて、あなたを助けるに違いありません。
 
良き信仰生活を送る秘訣とは
 
信仰においても、この新入学の子供達と担任の先生との関係、また新入社員と会社の関係などと似たような関係を見ることが出来ます。
 
それは皆さんお一人お一人が、御本尊皇円大菩薩様とどの様な関係を結ぶことが出来るかに掛かっています。御本尊皇円大菩薩様への全幅の信頼と信仰を心にしっかりと持ち続けることで、その方の生活と人生が変わって来るのです。先代はよく、「皇円大菩薩様と恋愛するような気持ちで接しなさい」と話しておられました。

私自身、これまでの様々な修行の時、一歩一歩歩く時も一呼吸一呼吸の中でも、常に御宝号を唱え、皇円大菩薩様に心を向け続けながら、修行の時間も日常の様々な時も、四六時中皇円大菩薩様を思い、皇円大菩薩様の霊波を感じるよう努めて参りました。
 
そんな中で、時には皇円大菩薩様の気配や体温までも感じられるような事がありました。そのような時は何とも言えぬ安らぎと、大いなるエネルギーを頂いている事を実感しながらの生活であります。皆さんもそこまでは行かずとも、少しでも多く、皇円大菩薩様の御宝号を唱えてみて下さい。必ずや偉大なお恵みを実感する事が出来るはずであります。
 
それは子供が親を思うように、時には夫が妻を、妻が夫を思うように、生徒が先生を尊敬するように、新入社員が上司を尊重する心持ちを持ちながら、学習に、仕事に、家庭生活を送るようにしていく事が大切です。そうすれば、穏やかな日々の中で学習の成果を上げ、仕事で成果を出し、さらには満ち足りた豊かな家庭生活が実現するに違いありません。
 
次世代に対し、範たるべし!
 
一方で、私たちは自分の子や孫達から尊敬されるに足る人格を持つように努めなければなりません。少なくとも子や孫の前ではいくつかの生活上の原理原則を、率先して示し続ける事が大切です。
 
具体的には、私の場合は孫達とその日初めて会う時は、必ず丁寧に挨拶する事を心掛けています。孫達も今では丁寧にお辞儀をして挨拶してくれるようになりました。そして別れる時も「さようなら」「お元気で」とこちらから別れの挨拶を必ずするようにしています。

近年では親子や孫と祖父母が友達のような関係である事が理想のように思っておられる方が多くなっているようですが、それだけでなく、良き人生の先輩として、子や孫に指針や規範を示す事がさらに大切だと思っています。
 
私の場合は二人の祖父をとても尊敬していました。父方の祖父、つまり開山上人様は、もの心ついた頃から岩のように大きく、とても厳しい方、といった印象を強く受けていました。
 
この事からおじい様(開山上人様)の言われる事には、「絶対に逆らえない」という厳然たるものを感じていました。この絶対的な祖父に導かれて、私は僧侶の世界に入って行く事が出来たのでした。それ程厳しくなくても、私達は家庭でも子や孫から何らかの敬意を受けるような生き方を、後ろ姿で示すべきだと常々思っています。
 
また職場でも後輩達に何らかの示唆を与えられるような先輩でありたいものです。人は子や孫、後輩や生徒から尊敬される人物たるよう努力する事が、ひいては自分自身を向上させる大切な契機ともなるのであります。
 
大乗佛教の菩薩の基本的な生きる姿勢として、「上求菩提 下化衆生」という言葉があります。これは自分自身が悟りを求めて努力する一方で、苦しんでいる人を助ける事を指しています。
 
新年度に当たって、新入学生や新入社員を受け入れる側も、生徒や新入社員、さらには子や孫から「尊敬されるだけの人間たるべし」という心構えをしっかりと持ち続けたいものです。新年度を迎えるこの時期に、新年を迎えるのに似た新鮮な生活を改めて心掛けながら、豊かで充実した日々をお送り下さい。合掌




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