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大日乃光






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2018年08月28日大日乃光第2217号
智慧の種を蒔き、慈悲の芽を育む「一休さん修行会」

蓮華院誕生寺 宗務長 川原光祐
 
性質の異なる二つの合宿
 
夏休みに入り、二つの合宿を行いました。一つは七月二十六日から二泊三日の「全国将棋寺子屋合宿」で、もう一つは八月二日から五日まで三泊四日の「一休さん修行会」でした。
この二つの合宿は、小・中学生が対象で似ているようですが、参加する子供達は少し様子が違っていました 
 
まず、将棋合宿は将棋が好きで、将棋が強くなるためと目的がはっきり決まっている事と、三日間も将棋が出来る喜びに胸膨らませて参加しています。そのためか、朝早い五時三十分の起床でも元気に起きて来たり、少々具合が悪くても寝込む子供はいませんでした。
 
しかし一休さん修行会はと言えば、親の言う事をなかなか聞かない子供や、親に言われて仕方なく参加している子供もいます。参加した目的もお経が読めるようになるためや、友達を沢山作るためだったりと個々に違っていて、一つの方向を目指すという事がなかなか難しい合宿です。
 
残念ながら具合が悪くなり、半日ほど休んでしまう子供が何人か出ました。そんな中でも、初めての経験や考え方がうまく伝わるように、この修行会のプログラムの構成を工夫しております。
 
今回、将棋合宿に講師として参加頂いた佐藤天彦名人は、小学校四年の時にご自身も合宿に参加され、四段になった七年前にも講師として参加頂いております。当時の思い出を伺うと、阿字観(座禅)と朝のお参りで大梵鐘を撞いたのが印象的だったそうです。名人にとっては将棋を指す事は日常的な事で、阿字観やお参りは非日常的な事なので思い出に残っていたのでしょう。
 
助け合いの心を育てる
 
今年は記録的な猛暑が続き、全国でも玉名市が一番暑いとニュースで流れたことが何日もありました。ですから今回一番気をつけたのが子供達の健康管理です。
 
特に二日目の小岱山清掃登山では、熱中症予防のために帽子やタオルは当然の事、ペットボトルを例年の二倍の二本持たせ、一本は常温、一本は凍らせて火照った体を冷やせるように予め準備をして、予定より一時間早く出発しました。少し道を間違えて時間が掛かりましたが、全員元気に下山しました。
 
やはり登山はきつかったようですが、疲れた時はみんなで押したり引っ張ったりと、助け合って登っていました。そして頂上から眺めると、有明海や奥之院が箱庭のように見えて大変綺麗で、達成感を感じていたようです。
 
一人で成し遂げる力を育てる
 
創作活動では例年のベンチ作りに加えて、今年は竹笛作りにもチャレンジしました。身近にある竹を使って縦笛と横笛、そしてパンフルート(サンポーニャ/一端が閉じた長さ・太さの異なる数本の管を、開端をそろえて長さの順に筏状に束ねて作った木管楽器)の三種類を、子供の希望により制作しました。
 
講師は出来るだけ手伝い程度にして、なるべく自分達で作らせるようにしました。ナイフで切ったり削ったり、ドリルを使って穴を開けるなど、今時の子供たちが中々体験しない作業もありましたが、集中して作業を行えば怪我をする子供はいません。
 
一本の何の変哲もない竹がちょっとした工夫と作業で楽器になる工程は、子供達にとって大変興味深く楽しい時間だったようです。そして作品が出来上がってからも、自分の手で作った笛と言う事で、誇らしげに吹いている様子が見受けられました。
 
このように一つの物を、最初から最後まで自分の手で作り上げるモノづくり体験は、子供達にとって大きな経験になった事でしょう。
 
親に感謝する心を育てる
 
貫主様の御法話では命の繋がりを話されました。ずっと昔の御先祖様から長い年月を掛けてお父さんお母さんがいて、そして今自分の命が誕生している。途中で一つでも亡くなった方がいれば、あなた方の命は今ここに存在しないのです。先祖からの考え方や教えなども伝え受け継がれています。現実に細胞の中のDNAはずっと繋がっているわけです。
 
また、お父さんやお母さんがあなたをどれだけ愛しているか、どれだけお乳を飲ませたりおしめを洗ってきたかなど、あまり押し付けがましく話しませんが、大変な苦労をして生んで育てて来られたのですと、『父母恩重経』を解説しながら説かれました。
 
家庭の中ではあまり言われる事が無く、考えた事も無い事を、親ではなく貫主様からお話頂いた事は、大変重く受け止めてくれたように思います。
 
精進忍辱の心を育てる
 
最終日の昼からは「功徳行」を行いました。この日は朝から幾分暑さが和らぎましたが、それでも暑い一日でした。四日目ともなると正座に慣れてきた子供も多く、そして『般若心経』も憶えたようで、大きな声で自信を持って唱える子供が殆どでした。
 
昼食後、一休さんの衣に着替え、一般参加者の方と共に行道です。子供達の顔もキリリと引き締まり、周りに緊張感が伝わる程でした。特に三層での護摩行の時は圧巻でした。護摩の炎を見つめながら、『般若心経』、「光明真言」、「御宝号」などを流れ落ちる汗をもろともせずに大きな声で唱えていました。あたかも数百匹のセミが鳴いている中にいるようでした。
 
一緒に修行された一般の方も、「子供達からパワーをもらいました」「元気が出ました」などと言われました。子供達も教えを受けるだけではなく、周りの人々に良い影響を与えているのです。皆さんも一度、子供達と一緒に修行をしてみて下さい。そのエネルギーに驚かれる事と思います
 
命を大切にする心を育てる
 
私達は一日に三度の食事を頂きます。その三度の機会を通して、自分の命を生かすために他の生き物の命を頂いている事を実感出来るように伝えます。そして感謝を込めて「いただきます」と唱えましょう。また「ごちそうさま」は走り回って準備をして下さった方々にお礼の言葉として唱えるように指導いたしました。
 
その他、茶碗や箸の持ち方を、手に取って頂く食器と、手に取らず置いたままで頂く食器に分けて指導致しました。食事の時の姿勢について、「食相」というものがあります。
 
獣の相(ライオンや犬のように食器を地面に置いてガツガツ食べる姿)、鳥の相(鳥のようにキョロキョロと喋りながら食べる姿)、ヘビの相(噛まずに飲み込むように食べる姿)、最後に人間の相(姿勢を正して静かに良く噛んで食べる姿)です。
 
修行会では全部で十回の食事を頂きました。その度に「あなた方は見掛けは人間の様ですが、姿勢はまだ人間の相になっていません。早く人間になって下さい」と冗談半分、本気半分に指導をしてきました。
 
子供達はこれまで行った事の無い経験やお話を、少しでも良き習慣にしてもらい、これから大きく成長するための糧として頂ければと、心より祈念致します。皆様の各ご家庭で、良き習慣を子供達・孫達に伝えて下さるよう念願致しております。合掌




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