2000年9月28日第102号
幸福ニュース

【 生きるー極限の中でー 】

今号は、竹下輝明様からの素晴らしい投稿を掲載させていただきます。終戦後約30年間のルパング島でのジャングル生活から戻られた小野田寛郎先生の講演の抜粋です。実体験に基づいた生き抜く秘訣です。

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昭和19年12月中野学校を卒業し、任務でルパングに就いたが、受け身ではなく自分の意志として、命をかけて国を守ることを貫いた。

信念がないと生きることはできない。信念があれば何か道があるはず。

ご飯に味噌汁が食べたいと思っても食べることはできない。手に入らないものを望むのは、自分を弱くする。不可能なことを考えてはならない。

(※便所掃除の神様といわれるイエローハットの鍵山相談役も、できないというのは、できないことをやろうとするからできないのであって、できることをすれば誰でもできる。便所掃除はだれにでもできることである。なにか通じるように感じた。)

食料は、干し牛肉(略奪した牛を解体したもの)・バナナ・ヤシのミルクしかない。バナナだけでは、力がでない。ヤシは油を取るためで食料ではない。限られた食料の中で生き延びて行くには、食べながら自分にあったバランスを見つけるしかなかった。

着たきりの服は破けてくる。島の住民から略奪した服を改造しようとするが、ポケットに入れた縫針は、いざ使おうと思ったときはサビて使えない。穴をあけその後を竹で縫ったが時間がかかりすぎてできない。そこで針の製作に取り掛かったが、困難を極めた。たった10本の針ができたが、ナイフなどいろいろなものを利用してこの程度の本数しかできない。いままでうぬぼれていた。人間は弱いものだと痛感。

苦しい場面にあうと、昔はよかったと思うことがある。これが人間を弱くする。現実をしっかり認識して、どうするか考えることが、生きる上では一番大切。例えばマッチがあれば・・・・など。火を炊く時、煙を出さずに燃やすことは難しい。

「ああ、また雨か・・・。」とマイナスにとらえた時点で、もうすでに雨にくらい負けしている。その時に風邪などひいてしまうことがある。「3日間のとおり雨だ。」とやり通すぐらいの気構えを持つことが大切である。

とにかく人間は自然が無ければ生きられない。また、社会が無ければ生きていけないことが、体験でわかった。

29年間に討伐隊が133回来た。年に3回はやりあったことになる。そのような状況で、どう気持ちを落着かせるかというと。故郷に「感謝」の気持ちを捧げるために手を合わせた。神仏は敬うが、助けて下さいと手を合わせたことは無い。

もし、手を抜いて死の直前に悔いが残るようなことがあったら悔しいと思い、常に精一杯やることをやった。ここまでやったから仕方が無いと、あきらめて死ねる心境を持てるまで努力してきた。苦しいときに不平を言わないこと。また、他人に責任転換をするのはもってのほかである。

医者も薬もないときは、自分の治癒力のみ。毎朝の大便や痛いところはないか、自分を確認し健康管理をしてきた。

最後は自分一人になったが、一人になっても弱い気持ちを自分の中に認めてはいけない。一人には一人の強みがあり、二人には二人の弱みがあった。両方を比較検討して一人でも少しの強みを見つければ、一人でもやっていける自信がでてくる。このように常に冷静に考えることが大切である。

アメリカのサバイバルの教科書の中にも、「生きることの希望を持つこと、あくまでも望みを失わないこと。そして、現状把握をする。いまはどうなっているのか。早く対処する。」とある。

死を決して実行すると、潜在能力が活性化し、何にでも対処できる。今、自殺者が増えているが残念でならない。死にものぐるいでやれば、道はひらける。追い込まれると、頭が働かなくなる。思考力が落ちる。何事もやってみなければわからない、すべて健康がベースとなる。常に病気にならないよう体を管理してきた。

最後に余談ですが、ルパング島から出て来たとき日にちを確認したが、約30年間で6日だけ、ずれていた。記録などはしていないが、どうして記憶したかというと、昨日に1日をたしてその日だけを覚えていた。しかし、苦しい状況になると頭がからっぽになり、そのため日程がずれてしまった。

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【竹下様の感想】

ルパング島で小屋をつくって、のんびり海を見ながら暮らしていたのではない。敵に見つかっていたら射殺されていたのである。毎日移動して敵の目をくらましていたから、生き延びてきたのである。健康で、生きてこられたのは、まず生き抜こうとする、強い『意志』があったからである。すべての原点はここにあるように感じた。

私ごとであるが、7年前、山口〜萩往還250キロに挑戦したことがある。21才の細いヒョロッとした青年と宿舎で一緒になった。私は110キロでリタイアしてしまったが、そのひ弱そうな青年は250キロを完走して戻ってきた。よくがんばったなと言うと、その青年から「あきらめたら終わりですから。」という言葉が返ってきた。頭の下がる思いがした。すべてに共通することだと、つくづく感じた。肝に銘じて忘れないようにしたいと思っている。

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【編集者の感想】

『文芸春秋』の小野田さんの手記を読んだことがあります。陸軍中野学校での残置諜報員教育では、「死ぬな。日本民族のために生きぬき、使命を果せ。」と教えられたそうです。

「見切り千両」という言葉もありますが、「成功とは、成功するまであきらめずにやり続けること」なのです。ところが、多くの人々は、資金や、生活や健康や困難さのために、どうしても途中でギブアップしてしまう。「意志ある所に道あり」ということを改めて感じた次第です。皆様はいかがでしたでしょうか。合掌

【坂村真民詩集】

《 命がけ 》

命がけということばは
めったに使っても言っても
いけないけれど
究極は命がけでやったものだけが
残ってゆくだろう
  疑えば花ひらかず
  信心清浄なれば
  花ひらいて
  仏を見たてまつる
この深海の真珠のような
ことばを探すため
わたしは命を懸けたといっても
過言ではない
人間一生のうち
一度でもいい
命を懸けてやる体験を持とう

【仏語集】

弓を学ぶのに、最初に当たることが少なくても、学び続けていれば、ついには当たるようになる。また、流れは、流れ流れてついには海に入るように、道を修めてやめることがなければ、必ずさとりは得られる。(Parinibbana-sutta)

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第99号 遠回りの医者

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第93号 結いの心

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第98号 コーチング

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