2000年12月20日第107号
幸福ニュース

インド珍道中記(その2)

今回、チベット難民支援のために約20日間インド各地を旅行しましたので、皆様にご報告したいと思います。旅のメンバーは4人、蓮華院国際協力協会の3人に現地の愛すべきチベット人通訳、飲んべえのガラッパチ、ツアンです。

【 インド珍道中記(その2) 】

インド中部のナグプール市から、西海岸南部のゴア市(港町)の近くのムンゴット居留区へ汽車で移動することになりました。インドの駅は改札がありません。ですから、誰でも構内にはいれます。物売りや乞食もプラットホームまでやってきます。それどころか、駅の中で昼間堂々と洗濯している人もいます。汽車用の給水ホースを使って、線路の中で洗い、線路と線路の間に張り巡らされた給水管に洗濯物を干しています。誰もとがめません。インドのおおらかさです。(首都デリーでも公園のフェンスに何十枚ものシーツが干されていました。)

ナグプールから、ムンゴット居留区近くの終点フブリ市までは、日本への事前連絡では25時間の汽車の旅のはずでした。ところが、特急列車(駅の数が少ないせいか、よく停まります。)に乗ってまもなく、それは、途中の乗換駅までの時間であることがわかりました。乗換駅から、さらに8時間かかるとのことです! 結局、移動に2日近くもかかったのです。旅行業者も決してあてになりません。いいかげんなのもインドの特徴の一つです。

とはいえ、車掌さんは親切でした。副車掌はもっと親切で、わざわざペットボトルを切って、即席のコップを作ってくれました。インド人にも親切な人がいるなーと思ってウイスキーを皆で飲んでいたら、副車掌がやってきて、おれにも酒をくれと言ってきたのです。少しついであげたら、「それでは少ない。もっとくれ。」ということで、けっきょく自分が飲みたかったんですねー。(勤務中なんですけどね。インドでは気にしません。)

ということで、ガイドのツアンは我々と飲んだ後も、また副車掌達としこたま飲んだらしく、翌日終点が近づいても寝たままでした。しょうがないので、客の我々がガイドを起こし、降りる支度をしました。ツアンはこの時、副車掌の名前のはいった胸章まで持って来てしまいましたから、今ごろ副車掌さん困っているのではないでしょうか。(インド旅行には、鉄道はあまりお勧めできません。広いですから、飛行機と車で移動してください。)

チベット人14,000人が生活しているインド最大のムンゴット居留区を視察後、一旦デリーへ戻り、今度は北のダラムサラへ向います。途中パンジャブ州を通りました。ここは頭にターバンを巻いたシーク教徒が9割を占める州です。彼らは牛を神聖視しません。ここでは、交通ルールも他州よりはちゃんと守られていました。

州都のチャンディガル市は、「ここは本当にインドなのか?」と疑いたくなるくらい美しい町です。牛が街中にほとんどいませんので、牛ふんの臭いもないし、街路も非常にきれいです。オートバイに乗っている人もちゃんとヘルメットをつけています。ただし、シーク教徒はターバンを巻いているので、ヘルメットをかぶらなくてもいいようです。(サッカーをやる時にはどうするのか聞き忘れてしまいましたが。)

途中2つの居留区を訪問し、チャンディガルからさらに北のダラムサラに向かいます。ダラムサラは雪をいだいたヒマラヤ山脈の麓にありました。海抜1500mから2000mの急斜面にある小さな町です。ここがダライラマ法王とチベット亡命政府の所在地です。皆さんインドは暑いとお思いでしょうが、ダラムサラは寒く、一緒に行った一人はここで厚いセーターを買ったほどです。(インド中部でも亡命チベット人はセーターの行商をして生計をたてている人が多いようです。)

ダラムサラはミニ国際タウンになっていました。アメリカやヨーロッパなど世界中からたくさんの若者が来て、チベット語やチベット仏教(ラマ教)の勉強をしています。西洋人の僧や尼僧もよく見かけました。外国からの観光客も多く、ホテルの建設ラッシュで、がけ崩れが心配になったほどです。

インターネット・カフェが人口の割には多く、約30軒ほどあります。ただ、よく停電がおこります。朝5時ごろ、爆弾を屋根に落とされたかと思って目がさめたら、猿が屋根で暴れていたのでした。「猿が電線を切って停電になることもあるかもしれないなー。」と冗談を言っていたら、翌日本当にそうなってしまい、冗談から駒でした。インドでは何でも起こります。何でもありなのがインドなのです。

ダラムサラはロウヤー・ダラムサラとアッパー・ダラムサラにわかれていて、アッパー・ダラムサラの方にチベット人が住んでいます。アッパー・ダラムサラ(別名マックロード・ガンジー)の入り口には、インド陸軍部隊が駐屯し、ダライラマ法王の宮殿もインド兵が護衛しています。そこにダラムサラの置かれた微妙な状況を垣間見るとともに、亡命の厳しさを感じました。

亡命政府の首相や何人かの閣僚の方に会談でき、援助に関し直接話し合うことができました。首相からはうれしいことに夕食にも招待されました。でも心配がひとつあります。飲んべえの通訳ツアンに飲まれたらせっかくの夕食会がぶちこわしになるかもしれません。そこで、私は行く前に "Do not drink! You can drink after dinner." と強く言いました。

食事前の飲物を注文する時、ツアンは珍しいことにホットレモンを注文し、我々をビックリさせました。でも、首相がウイスキーの水割りを注文し、ウエイターがグラスに注いでいる時、ツアンの目はうらやましそうにジーッと首相のグラスに注がれていたのです。(ツアンの名誉のために言っておきますと、この晩、彼は食べる暇もないほど実によく通訳の役目を果たしてくれました。)

日本ではあまり報道されていないチベット問題について少し述べたいと思います。1959年以来中国はチベットに武力侵攻し、占領しています。多くのチベット人が死亡しました。まだ多数の政治犯が刑務所にいるそうです。大量の中国人の移住と、チベット文化・伝統を破壊しながらの急速な中国化が、現地では進展しています。現在でも毎年少なくとも2千人以上の新規亡命者が、インドやネパール、ブータンへ険しい雪の山道を越えて逃げて来ます。

ダライラマ法王は現在では、あえてチベットの独立を標榜せず、中国政府のもとでのチベット民族の完全な自治権を要求することに方針を転換しました。これに対し、中国政府は国の分裂をたくらむ企てだとして、話し合いは進んでいない状況です。

私達はNGO(Non Governmental Organization 非政府組織=民間援助組織)ですので、政治にはかかわらず、仏教の慈悲の精神に基づいて、あくまで人道的観点から、インド在住の亡命チベット人への援助を続けていく考えです。日本の方々には、事実を事実として、知っていただけたらと思います。

日本は今後も貿易立国でいく以上、アメリカとも、中国とも仲良くせねばなりません。中国の13億の人々がどうやって食べていくかという事は、日本のみならずアジアの国々にとって、将来重大な問題として、各国に影響を与えると考えられます。中国が食料の輸出国から輸入国に転ずると言われる2010年以降、食料問題=環境問題は重要な問題となってくることでしょう。

以上、インドの特徴は多様性と落差の激しさにあることを実感し、また厳しい世界情勢の中で、インド人もチベット人もたくましく生きており、日本がめぐまれていることを実感した20日間の旅でした。(終)

チベット関係ホームページ

1)ダライ・ラマ法王日本代表部事務所
ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のホームページ

2) I Love Tibet!
チベット・アラカルト。政治からレストラン、旅行情報までいろいろ満載。

3)チベット・スノーライオン友愛会
チベットに援助を行っているNGOのホームページ。

4)チベット亡命政府ロンドン代表部ホームページ
チベット亡命政府公式ホームページ。政治、行政、居留地状況、海外からの支援、中国に対する見解、その他に関する膨大な公式情報が満載。英文。

5)蓮華院国際協力協会(ARTIC)
蓮華院国際協力協会のページ。東南アジア各国での活動内容や報告を掲載。

【坂村真民詩集】

《 たくましい魂 》

今でも はだしであるき

今でも はだかでくらし

今でも 牛の糞(ふん)で煮たきをし

今でも 一丁の文字さえ知らず

今でも 木や石に合掌する

貧しい

アジアの民

だが

彼等の魂は

たくましい

【仏語集】

努め励んで得た富は、自分ひとりのものと考えて自分ひとりのために費やしてはならない。その幾分かは他人のためにこれを分かち、その幾分かはたくわえて不時の用にそなえ、また国家のため、社会のため、教えのために用いられることを喜ばなければならない。

ひとつとして、「わがもの」というものはない。すべてはみな、ただ因縁によって、自分にきたものであり、しばらく預っているだけのことである。だから、一つのものでも、大切にして粗末にしてはならない。(六方礼経)

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第97号 男と女

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第100号 第13回九州内観懇話会

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