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2017年10月09日大日乃光第2189号 貫主権大僧正様御親教
大祭を前に思いやりの心を抱き社会を照らす灯火になろう 

朴の季節に坂村真民先生を偲ぶ
 
本誌読者の多くの方々が憶えておられると思いますが、〝念ずれば花開く〟の坂村真民先生は、朴の花がとても好きな方でした。そこで私は奥之院と本院の貫主堂の裏、そして南大門の南側にも朴の木を植えています。
 
五月頃には大きな花を咲かせます。泰山木にそっくりの花です。花が咲くという事は実が成ります。ちょうど今頃実っていて、十五、六センチぐらいの大きさの黒っぽい皮の中に、数十個の真っ赤なルビーのような実が覗いています。
 
また本堂の裏には椋の木があります。調べてみると九州中部から南の方にしか生息しないそうです。葉の表面はガサガサしていますので、かつて茶杓を作っていた頃、この葉で最後の磨きをしていました。椋の実はまだ青いのですが、来月には黒くなってくると思います。
 
私は子供の頃、よくお隣の家の大きな椋の木に登って実を採り食べていました。こんな大木にどうやって登ったのだろうと思われるかも知れませんが、それこそ物心つくかつかないぐらいの頃、傍に生えていた孟宗竹を伝って登っていたのをかすかに憶えています。
 
ある小学生の喪失と再生の物語
 
二、三ヶ月程前に、ある月刊誌にとても感動的な話が掲載されていました。
ある学校の五年生に、非常に落ち着きの無い、宿題も一切しない、乱暴を働く子がいました。この少年を仮にA君としておきます。
 
担任になった女性の先生は困った子だなと思ったそうです。A君をどうしたものかと思い、色々考えた末、これまでA君はどういう様子だったのだろうと過去の担任の先生達の記録を読んでみました。
 
すると小学一、二年の頃、A君は好奇心旺盛で、将来を期待出来る可能性を秘めていて、クラスをまとめるリーダー格でもあるという事が書いてありました。
 
しかしその翌年から急に成績が落ちていました。実は三年生の二学期に、A君の母親が病気で亡くなっていました。それからというもの、宿題を忘れたり遅刻をしたりという事が次第に増えて行きました。
 
四年生の時の家庭訪問の報告によれば父親が酒乱になり、A君を殴ったりしている事が書かれていました。そしてますます成績が落ち、学校で鬱憤晴らしをするようになってしまっていたのです。
 
先生は家族の情況を調べて、A君はこういう過去を背負ってきたのかと、「これは自分が何とかしなければいけない!!」と考えました。
 
先生の愛情溢れる接し方が子どもの可能性を開花させた
 
放課後、先生には色んな事務的な事や様々な用事があるので、「A君、私は放課後しばらく教室にいるから、あなたも残って一緒に勉強しない?わからない事があったら教えてあげるよ」とA君に言いました。
 
昔の事ですからそういう風に出来たんですね。そうするとA君はとても喜んで、一所懸命先生に質問したりしたそうです。そうしている内に少しずつ成績は上がって行き、行動も落ち着いてきたのでした。その次の年も先生はA君を受け持ちました。A君は更に明るくなって行きました。
 
六年生の家庭訪問の前に、その少年が「いつもお世話になって有り難うございます。先生、これお母さんがつけていた香水なの。先生にあげる」と言って香水を持ってきたそうです。先生はこれをつけて家庭訪問に来て欲しいというメッセージなのだろうと思って、その香水をつけて家庭訪問に行きました。
 
すると玄関を入るなり、A君はその香りを待っていましたと言わんばかりで「お母さんの香りだ」と大変喜びました。それからもA君の成績はメキメキ上がり、行動も更に良くなったという事でした。
 
それから十年後、A君から先生に手紙が届きました。その手紙には、「自分は母親を病気で早く亡くしました。同じように病気で苦しんでいる人をなんとか助けたいと思い、今は医学部で頑張っています」と書かれていました。
 
そしてそれからまた十年後「結婚することになりました。ぜひ母親の席に座って下さい」と、結婚式の招待状が届いたそうです。A君は小さい頃は大変苦労したけれども、その先生の心配りと愛情によって立ち直り、しっかりした社会人となり、お医者さんになったというお話でした。
 
一人の先生の果たす役割には無限の可能性があるのです。その先生と出合えなかったらおそらくA君は荒んだ生活を続け、目標を持つ事も出来ず、暗い人生を送っただろうと想像出来ます。その意味でA君にとって、この先生はまさに大恩人なのです。
 
子どもの一生を左右する小学校の先生の大切な役割
 
実は私にも非常に感謝している先生がいます。数年前に九十八才で亡くなられましたけれど、その先生には度々挨拶に伺い、結婚の報告にも妻を連れて伺いました。
 
私は小学六年から家族と共に佐賀に移りましたので、小学五年は私が玉名で過ごした最後の年でした。それまで蓮華院では両親はとても忙しかったので、あまり私の世話をする事が出来なかったように思います。
 
姉はしっかりしていましたので、私にも同じように接していたようです。ところが私は必ず忘れ物をするのです。あまり宿題をして行かない。服を脱いだら必ず忘れて帰って来る。朝、雨降りで傘を持って行き、帰りに雨が止んでいると必ず忘れて帰ってくる。そういう注意散漫な少年だったのです。
 
そんな風に、それまであまりパッとしなかった私が、小学五年生になって担任の先生が代わってから成績がぐんと上がりました。私はこの先生のお陰で少しはまともになったのです。
 
自分の子どもでなくても、そういう愛情を与える事が出来れば、相手の一生が良い方へ変わって行く事があるという事を体験的に実感しています。小学校の先生の場合は、それを非常に行ないやすい立場であると思います。
 
家族愛や師弟愛から始まる良き心の交流を広めよう
 
去る九月三十日には、平成二年に晩年の先代が始められた「子供の詩コンクール」の、二十七回目の表彰式が開催されました。テーマは〝おとうさん・おかあさん〟です。今回も七千篇近くの応募がありました。
 
去年は熊本地震の影響で、応募数がかなり減ると思いましたが、先生方のご尽力もあって、逆に増えました。地震の時の怖かった事や、その中でお父さん・おかあさんがしっかりと家族を支えてくれたという作品が沢山ありました。むしろ苦難の時ほど良い作品が出来るのだと実感しました。そういった意味で、今年の表彰式もまた楽しみにしています。
 
十月十三日には、表彰式で使われた特別三賞と優秀賞の作品が載った冊子を皆さんにお渡し出来る事でしょう。本格的な詩集は年が明けてから出ます。
 
親や先祖だけではなく、先生や友だちなど、相手を大事に思う気持ちに抱かれ、支えられる中で、人はどのような影響を受けてどのように変わっていくのでしょう…。子どもを取り巻く環境、とりわけ家庭における子育ての環境は何と言っても大切です。
 
それと同じぐらいに学校で素晴らしい先生に巡り会えてA君や私の人生が変わったように、私達も自分の家庭は勿論の事、たとえ先生でなくても、人と接する時に相手に何か良い影響を与えたいという思いを持って生活する事、相手を思いやる気持ちを持って周りの人に接する事がとても大事ではないかと思います。
 
大祭を迎えるに当たって、私達はそれぞれがお互いを照らし合い、お互いを思い合う、そういう社会に向かって一歩でも二歩でも周りに働きかけて行ってほしいと思います。合掌




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