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大日乃光






大日乃光

2013年10月19日大日乃光第2057号
「四百年の歴史を刻む奇祭と地元に潜在する弥勒信仰」

地元四十九池神社の秋季例大祭

いよいよ秋も深まり、日本各地では収穫の季節となりました。

当山のすぐそばにある産土(うぶすな)の神様は四十九池神社です。この神社では、十月十五日に秋の例大祭が行なわれます。この祭礼は古くから熊本県北部の三大奇祭の一つと言われ、約四百年前から始まっているようです。何が変わっているのかを、以下で説明します。

「初観音」の日が祭りの初日

まず一月十八日の「初観音」の日に、その年の担当になった人々が、この地の北に聳え、当山の奥之院もある小岱山の山頂近くまで登り、四十九本の長い長い矢竹を伐ってくる事から祭りの準備が始まります。約四百年前まで、この小岱山には筒ケ岳城と云う山城がありました。その名残りで山中には合戦に備えて矢柄に使う竹が沢山植えられているのです。

その矢竹をまずまっすぐに伸ばします。そして約三メートルの長さに切ります。その後、決められた伝統に従って、四十九本全ての矢の紙で作られた矢羽に、一本一本独自な名前が書き込まれます。さらに、矢の胴体に様々な色の紙が巻きつけられて、矢の本体が完成します。これを「流星」と呼びます。

そして祭り本番の十月十五日には、直径三センチ、長さ二十センチの竹筒(現在は金属製の筒)に特殊な火薬を詰める作業が、宮総代と実行委員会の皆さん総出で、早朝から始まります。

こうして出来た火薬入りの竹筒が先端に取り付けられ、導火線も付けられた「流星」は夜を待ちます。その他にも別のグループによって製作された様々な仕掛け花火が、境内所狭しと仕掛けられます。

中国伝来?の「築地楽」

今一つの催しは独特な「楽」の演奏です。これは笛、太鼓、三味線の三つの楽器で演奏されますが、中でも笛は完全な手作りで、代々世代を超えて、その作り方が伝承されています。そのために節の間隔がとても長い、特殊な竹が、お宮の境内に植えられています。

最近の研究では、東シナ海を隔てる上海に、この笛と全く同じ作りの笛がある事が分かっています。それはなぜかと申しますと、遅くとも平安時代から江戸時代に鎖国政策が始まるまで、玉名は国際貿易の拠点だったからです。

国内向けの港についても、今の在来線のJR玉名駅のあるその場所が、奈良時代の港跡であった事も確定されています。駅のあるその場所の地名が、字名で大湊(おおみなと)となっている事も、その史実を裏付けています。かつての高瀬や伊倉の港と、現在の上海の近くの寧波(ニンポー)とは、室町時代前期の南北朝時代には、定期航路まで開かれていました。

そんな中世以来の歴史を背景として、花火を打ち上げ中国製の笛を使う祭が、四百年前からここ玉名市築地では行われ続けているのです。花火の文化は長崎の精霊流しからも分かるように、中国から伝来した文化です。

〝四十九〟に隠された知られざる信仰の歴史

長々と、四十九池神社の秋祭りの話を致しましたが、故田邉哲夫先生の説によれば、そもそもこの四十九池神社の名前の起こりは、弥勒菩薩の「四十九院」に基づく社名ではないかと話しておられました。

そもそも神道の世界では、〝四十九〟という数が使われる事はほとんどありません。亡くなられた方の魂が、次の世に転生する(生まれ変わる)のが四十九日というのも、この弥勒菩薩の四十九院に因んでいるのです。

ですから皇円上人の桜ヶ池御入定信仰が何らかの形で生誕地の玉名に伝わり、それに伴って桜ヶ池に因む様々な地名も、生誕地の当寺跡地を含むこの地域に併せて伝えられたのではないかというのが、田邉先生の立てられた仮説です。

相良一族と共に将来された遠州桜ヶ池の龍神伝説

十数年前に玉名市内に設立された看護福祉大学の隣に、蛇ヶ谷公園があります。この「蛇ヶ谷」の地名も、約七百年前に鎌倉幕府によって、遠州から熊本県の人吉に移封させられた相良(さがら)一族によって、皇円上人の生誕地(即ち当山)の近くに伝えられたのです。

この事は先代貫主、真如大僧正様が三十代の頃に、田邉先生と一緒に研究されたことで初めて分かったことです。それからすでに五十年も過ぎていますが、残念ながら、その歴史的事実を知る玉名市民は未だに少ないようです。この事は、四十九池神社にまつわる伝承にとっても当てはまるのではないかと推測されます。


豊穣への感謝に始まった様々な祈りと宗教儀礼

ところで「祭り」という言葉の起源については「神々と人々がマジワル、マツワル事からマツリとなった」という説があります。また「マツリゴト」、つまり現在の政治そのものをマツリとも呼んだようです。

古代の私達の祖先は稲作農耕文化の中で、収穫に感謝する宗教的な思いを地域の祭りとして何千年と営んできたのです。そこでは地域社会の安定や一族の繁栄、さらには個人の幸せをも祈られて来たはずです。

来たる十一月三日の奥之院開創三十五周年記念大法要は、別名「奥之院秋の大祭」であります。全国の信者の皆さんだけでなく、九州一円を初めとする遠近の皆さん方の憩いと楽しみの大祭になっております。

つまり当山の御本尊皇円大菩薩様と、奥之院に集う万余の参詣の人々が交わり心を通わせ、さらには信者さん方と一般の参詣の人々とが互いに心をマツワ(交わ)らせるのです。

どうかそんな秋の大祭で、未だ信仰に入っておられない大勢の人々を、信者の皆さんがその真剣な祈りの後ろ姿を通じて、祈りの輪にいざなって頂きたいものです。

「柴燈大護摩祈祷」は全ての祈りが結実する究極の熱祷

皆さん方お一人お一人がばらばらに祈るだけではその力は小さく限られてしまいます。対して何と申しましても熱祷の極致である柴燈大護摩祈祷では、全国の多くの信者の方々と共に祈ることによって、互いの祈りの共鳴の中で普段のお参りでは到底出ない程の祈りのパワーが生まれ、必ずや皇円大菩薩様の絶大な御霊力とマツワルのは間違いありません。

真剣な祈り、深い祈り、強い祈りで御本尊皇円大菩薩様の御心にマツワリ、感応道交の中で、良き願いを叶えて下さい。合掌



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