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大日乃光






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2016年12月09日大日乃光第2161号
「多宝塔は未来へと繋ぐ信仰の証し」

千載一遇の多宝塔見学会
 
前回の準ご縁日は勤労感謝の日で祭日でした。休みなのでお参りできたという人もおられるかと思います。そして今回は土曜日で、休みの方も多いと思います。それでなくても、ご縁日、準ご縁日には必ずお参りされる方がおられます。その方々には本当に感心致します。

さて、先月十九日の土曜日には多宝塔の見学会が、熊本大学工学部の伊藤教授(準教師)のお世話で日本建築学会九州支部歴史意匠委員会と匠社寺建築社の共催で開催されました。

この日は朝から雨でしたが、建築中の塔など滅多に見る機会のない事ですから、十時と十一時、一時と二時と三時の五回に分けて多宝塔を見学して頂きました。設計者の大浦さんが説明して、伊藤教授が補うという感じで進んでいきました。
 
二十年の時を隔て、世代を重ねた建築現場
 
かつて、五重塔を造る時には「塔の会」という研究会が設立されましたが、その時の主要メンバーを務めて頂いた先生がひょっこりみえられました。本当に懐かしく嬉しく、その時の事を思い出しながら色んな話をしました。

時の経つのは早いもので、五重塔の完成から確実に二十年が経っています。五重塔は平成八年の夏に足場を外しました。落慶法要は翌、平成九年の四月でした。

その当時の「塔の会」でも、建築中の五重塔の見学会が催されました。二十年経っていますから、その当時、五重塔の工事現場を見た十代の少年は三十代になっています。その一人は木造建築の高等専門学校を卒業すると同時に宮大工になっています。

また、この見学会で大変感激された大工さんが一人おられて、自分の息子さんに現在の匠社寺建築社に入るよう勧められました。息子さんは当時少年でしたが、十五年後には南大門を、そして今回の多宝塔でも副棟梁として現場を取り仕切っておられます。

私は天候の事は全く心配していませんでしたが、前日から降り出した雨は見学会の始まる直前に上がりました。そして十二時過ぎに二回目の見学会が終わった頃にまた降り出し、一時からの説明の時にはまた上がりました。そして見学会が終わった頃にまたポツポツ降り始めました。こうして天候のあまり良くない中で、多宝塔の見学会は全て無事に終えることが出来ました。
 
多宝塔建立の意味とは?
 
先に話した「塔の会」の先生は、福岡から車を飛ばして来られました。すでに八十二才になられますがお元気で、好奇心旺盛です。そんな先生と接していると元気を頂きます。先生は古い建物を保存したり、時には復活したり、そういう事を一所懸命研究し、活動して来られたのです。

先生によれば、「今回の多宝塔のように、新しい伽藍が造られるという事は本当に稀な事で、すごい事なんですよ!」と、しみじみと話しておられました。

そういう中で、改めて別な視点から、多宝塔は何のために造っているんだろうか?社会的にみればどういう意味があるのだろうか?と考えてみました。

多宝塔はこれから先五百年、千年…と建ち続ける訳ですから、【未来の人々への贈り物である】という、そういう見方も出来る事に思い至ります。

現代の日本社会では、将来に亘って文化財になるようなモノをどれだけ造っているだろうか?この多宝塔が竣工し、佛像が収まった後には、未来に亘ってずーっと発信を続けるのです。

五重塔の姿を見る人、拝む人と同じく、多宝塔の姿に接した人がその姿形から受ける印象、またそこから受ける感動は続くはずです。そういう良き波動をひと時も休むことなく発信し続け、人々に無言の説法を説き続けて行くわけです。

その意味では、今回の多宝塔も五重塔と同じく未来への贈り物になるに違いないとしみじみ感じました。
今、まさにこれを造っている人達に、心の底から感謝をしたいものです。
 
多宝塔は信仰の結晶
 
そしてそれ以上に、信者の皆さん達が長年続けて来られた様々な祈願や供養が集まって、平成の伽藍としての姿形が造られている事に、改めて深い感謝と感銘を受けています。

多宝塔には「部材奉納」も頂いておりますが、それ以上に皆さん達の長年の信仰の賜である事、そしてその信心の結果が多宝塔に集まっている事を実感しております。

皆さん達の健康祈願や開運祈願、また病気が治りますように、家族が幸せでありますように、職場での人間関係が少しでもよくなりますようにと、人によって願いは様々です。

この様に全国の多くの信者の皆さんが願いを込められる中で、様々な願いと祈りを御本尊皇円大菩薩様の御加護のお力によって叶えて頂いています。そしてその事を通してそのまま、未来の人々への希望や光に転換して頂いているのです。

皆さんは自分自身や家族の為にお願いされています。私も一所懸命、佛様にそれを取り次ぎます。その祈りが巡り巡って周りの人の為になっている、未来の為になっているという事なのです。

多宝塔の建立が進む中で、自分の為の祈りや家族の為の祈りといった自利(じり)の祈りが、皇円大菩薩様の御霊力によって利他(りた)の祈りに自ずと転じている事を、実感しているところです。
 
利他的になった日本人の国民性
 
日本人の国民性の調査で、奥之院が出来た頃の昭和五十三年、今から三十八年前の日本人の意識と、現在の人の意識とではどう違うのかという事を、前回お話ししました。今から三年前(平成二十五年)の統計と、三十八年前の統計を比較できるわけです。

前回と重複しますが、三十八年前は、他の人の役に立ちたいと思っている人が三十六パーセントでした。そして、自分の為になる事を中心に生きる人が七十四パーセントでした。約三割の人は人の為に何か役立ちたいと思っていた。そして約四分の三は自分の事を中心に、自分が幸せでありたいと考えていたのです。

そして現在は、人の役に立ちたいという人が四十五パーセントとほぼ半分。そして自分の事を中心に考えたい人が四十二パーセントと割合が入れ替わったわけです。

という事は、日本人が利他的になってきているという結論です。自分のことよりも人の役に立ちたいと思う人が増えているという事です。

これに関連して、日本人の宗教意識というのがある雑誌に載っていました。国際世界調査プログラムという国際的な組織に基づいて、日本ではNHKの文化協会が担当して調査をしています。
 
ご先祖祖様を信じる心が、利他の精神を育む?
 
それによると、ご先祖様の存在をはっきり認める人と認めない人の割合や、ご先祖様の霊とか、ご先祖様のお守りとかへの感じ方が、昔と今ではどう違うのか?また年代別の感じ方はどう違うのか?という事などが出ていました。

ご先祖様の霊的な力を肯定する方は、六十代よりも上の人が多いと思いますか?それよりも若い人の方が多いと思いますか?ご先祖様の事を肯定的にとらえている割合が一番多いのは、なんと三十代の女性で七十一パーセントです。そして一番それを感じないと思っている世代は六十代の男性で、三十代の女性と比べて半数以下の二十八パーセントでした。

それから、死後の世界を信じるか?生まれ変わりを信じるか?という設問についてもほぼ同じ傾向でした。ある意味では六十代の男性が一番信仰心が無いのです。これは私の年代でもあります。(七十代八十代の統計はありません)

ご先祖様の霊的な力を肯定するか?宗教的なものを肯定するか?という設問では、日本人の四十七パーセントの人達が肯定しているとはっきり出ていました。先程の利他の精神、人の為に役立ちたいと思っている人と、ほぼ同じ割合です。

それから、あの世の存在を絶対的に信じている人が三十八パーセント、まあまあ信じている人が二十三パーセントですから、これも合わせると六十パーセントを超えています。若い人の方が半分を超えているし、女性では七割を超えています。
 
命を繋ぐ役割が、信仰心をより一層育む
 
大体女性の方が信心深いというか、神佛に対して謙虚な気持ちを持っていて、佛様に近いのだろうと感じるわけです。これは母親として命を生み出す、命を育む立場にあるからなのかもしれません。

日本人が全体として死後の世界や生まれ変わり、さらにはご先祖様のご恩などについて、より実感を持つようになっている事は大変良い事に違いありません。

ご先祖様のご恩を感じると同時に、私達はそのご恩に恩返しする心構えを更に深めて行くと共に、私達は自分自身の生き方や「信仰の大切さ」を、その後ろ姿を通じて次の世代にしっかりと伝えていきたいものです。合掌




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