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2024年10月17日大日乃光第2415号 貫主権大僧正様御親教
奥之院開創四十六周年を機に、いま一度「功徳行」から始めよう 

奥之院大祭の横綱土俵入りで五年ぶりに地鎮の祈りを

皆さん、ようこそお参りでした。 今朝(十月三日現在)は気温が二十度を下回り、一段と涼しくなりました。雨が降ったお陰もあって、凌ぎやすい季節となっています。非常に有難い事です。

このように四季が移ろい行く事が、如何に有難いかと、この年になると、ますますしみじみと実感しております。

さて、奥之院大祭まであと一ヶ月と迫りましたが、ここにきて漸く横綱照ノ富士関の横綱奉納土俵入りが決まりました。 令和元年の白鵬(現宮城野親方)以来、実に五年ぶりに横綱をお迎えする事になります。

照ノ富士関は九月場所を休場されたので心配しておりましたが、地方巡業から復帰される事になり、奥之院大祭にもお参りされる事になりました。

今年一年は能登半島地震に始まり、九月の能登半島豪雨災害が重なり、今まさに塗炭の苦しみに沈んでいる方々がおられます。また世界の紛争地域では、先行きの見通せない戦禍の苦しみの中で、嘆き悲しんでいる人々がおられます。

蓮華院の属する真言律宗では、宗祖叡尊上人以来、文殊信仰を大切にして来ました。「三人寄れば文殊の智慧」と言い習わすように、文殊菩薩は智慧を司る佛様とされていますが、『文殊師利般涅槃経』という経典によれば、文殊菩薩がこの地上に現れる時は、貧窮孤独の衆生となって現われ、私達に慈悲心、菩提心を起させるとあります。 奥之院大祭ではそういった方々の悲しみや苦しみに出来るだけ寄り添い、この大地を鎮める土俵入り本来の姿に立ち返り、皆さん達と心を合わせて祈りを捧げたいと願っております。

宇宙的な眼差しの皇円大菩薩様の道場観

能登半島に限らず、近年多くの天災が日本を襲っています。また海外でも大きな自然災害が発生しています。そういった事ある毎に、これは地球が人類の我儘に怒っているからではないかと思える程で、そう感じているのは私一人だけではないと思います。このように地球を一つの大きな生命体として捉える考え方を「ガイア理論」と言います。

地球を超えて、もっと広い宇宙的な視点から我々人類を捉える考え方もあります。この「宇宙的な視点」は、ある意味では神佛の視点でもあると言えます。現に私達真言宗では最高の佛様である大日如来がまさに宇宙の大生命の象徴ですから、その大日如来の視点はまさに宇宙的な視点でもあるのです。佛教はこの様な生命観や世界観を、真言密教として生み出しました。

私自身、毎朝の日課である全国の信者の皆さんの為の御祈祷では、「皇円大菩薩供養法」という、瞑想を伴った修法の中で様々な祈願を致します。 この修法では、先ず自分自身を清め、周囲に結界(霊的なバリアー)を張り巡らせ、次に皇円大菩薩様の居られる世界を瞑想で有り有りと描き出します。これを「道場観」と言います。 以下にその一部を記してみます。

『虚空(宇宙)ノ中ニ (バン)字アリ。 字変ジテ水大トナル。水大変ジテ地球トナル。地球ノ中ニ日本国アリ。ソノ中ニ桜ヶ池アリ。桜ヶ池ノ無限ノ池底ニ (ア)字アリ。 字変ジテ蓮ノ実ト成ル。コノ実ヨリ芽ヲ出ダシ、七百六十年ノ歳月ヲ経テ水面ニ至ル。水面ニ於イテ大白蓮華開敷ス。……ソノ姿ヲ沙門ニ擬シテ、胸ノ前ニ秘印ヲ結呪シ、衆生済度ノ大誓願ニ住シテ、結跏趺坐シ給フ…云々』

この様な瞑想の中で皇円大菩薩様を有り有りと目の前に描き、その後皇円大菩薩様を自分の胸の中に再び描き、目の前の皇円大菩薩様と自身の中の皇円大菩薩様を互いに融合させます。その他に様々な「身」「口」「意」に亘る瞑想を修した上で、皇円大菩薩様と一体となって皆さんからの様々な願いに応じた祈願祈祷を進めていくのです。

大病を患って入院した時にも、寺務所の職員のサポートを受けながら、病室の中で皆さんのために祈願祈祷を続けておりました。

奥之院開創と共に始まった月に一度の『功徳行』

ここで、奥之院大祭で前行として執り行う「功徳行」について少しお話し致します。 この功徳行は、昭和五十三年の落慶大法要の時から、毎月第一日曜日に修してまいりました。 今年の大祭では、昨年に倣い、十一月二日の午後二時から執り行います。ぜひこの機会にご参加下さい。

ここで改めて功徳行の意義と、その功徳についてお伝え致します。 そもそもこの〝功徳〟という言葉はどのような意味なのかを、ここで少し説明いたします。 ①優れた徳性、良い性質、価値ある特質。つまり、善を積んで得られる福徳の事。 ②幸運の原因、福祉のもとになる良き行い、優れた結果をもたらす能力。 ③善行の結果としての良き報い。また、良き行いを実行した結果、得られる恵み。 ④ご利益、すぐれた点、利徳の事。 などと『佛教辞典』には解説されています。

つまり「功徳行」と称す当山独特の修行は、虚心に修して頂くことによって、知らず知らずの内に良き結果をもたらし、ご利益や福徳を授かり、恵みを頂ける修行という事なのです。 さらに詳しく説明しますと、まずは良き結果、つまりご利益を頂く条件としての心構えや心身の状態を作る事そのものが功徳であり、また、そのご利益や福徳に恵まれることを、「功徳」と言うのであります。

つまり、ご利益や福徳を頂く条件を作る事を「功徳を積む」と表現し、ご利益やお恵みを頂く事そのものを「功徳を頂く」と言い習わしているのです。 そして、これはまことに有難い事なのですが、皇円大菩薩様が学僧としての人生を送られた比叡山で法然上人など多くのお弟子さん達を訓育された場所が、何と「功徳院」であります。この「功徳院」は通称「法然堂」とも呼ばれ、現在も比叡山の根本中堂の近くに在ります。

この修行は先代真如大僧正様によって「功徳行」と名付けられました。誠に良い名を付けて頂いたと感謝致しております。 開山上人様が奥之院を建立されるに当って、こんな言葉を残しておられます。「信者の皆さんが功徳を積む所として、奥之院を建立したのであります…」まさに〝言い得て妙〟であります。

その意味では、来たる奥之院大祭では「功徳行」を自ら修し、目には見えないけれども大きな功徳を積んで、皇円大菩薩様の広大無辺の御霊力を頂いて下さい。そして数々の福徳を授かって頂きたいものであります。

身心を清める功徳行入行の作法

これまで功徳行を修した事のない新しい信者さんの為に、少しその内容を説明します。 先ず白衣に腰衣を着け足袋を履き、輪袈裟を着け手には数珠を持ちます。女性は白い頭巾を付けて頂きます。つまり略式の僧侶・尼僧の姿になって頂くのです。衣装が変わると自ずから心構えも変わって行きますので、これは大きな意味があります。

全員が揃った所で行列を組み、五重御堂に向かって静かに進んで行きます。その時、功徳行者の一歩一歩の足の下には蓮華の花が咲いていると思って静かに歩んで下さい。 仁王門をくぐる時、左右の仁王尊に拝礼し、門を過ぎると皇円大菩薩様の大佛様と開山堂の開山上人様に向かってそれぞれ拝礼します。いよいよ道場である五重御堂に入る時も「これから佛様の胎内に入って修行させて頂きます」という気持ちを込めて丁寧に礼拝します。

堂内に入るとローソクを灯し、線香を供えます。向かって右側から内陣に上がりますが、その時少量の塗香を受け、両手で揉み、胸に少し当てて広げます。 いよいよ内陣に入る所で〝香象〟という香炉を跨ぎ、お香によってご自身を下から清めます。この香象を跨ぐのは、古代インドの高貴な儀式で行なわれていた作法です。私達日本人にとっては、このように「物を跨ぐ」という習慣がそもそもありませんので、少し申しわけない気持ちにもなります。しかしこれは、日常から非日常の佛様の世界に入るために設えられた作法なのです。

こうして改めて厳粛な心が定まり、続いて佛様の智慧と慈悲によって浄められた浄水(洒水)を頭の頂に頂戴します。身も心も清めて「功徳行」が始まるのです。行の内容は、次号でお伝えいたします。

信仰心を呼び覚ます熾火(おきび)になろう

来たる十一月三日には、ぜひ沢山のお知り合いやご親戚を誘われて、秋の素晴らしい日に柴燈大護摩祈祷で真剣な祈りを捧げて下さい。 皆さん方の真剣な祈りを、さらに多くの人に見て頂く事が、佛様の光を反射する事にもなります。

それがさらにより多くの人々に得も言われぬ感動と、信仰心を呼び覚ますきっかけにもなるのです。 皆さん方お一人お一人が、柴燈大護摩の熱祷を沸き起こす熾火(火種)の一つになるのだと思ってお参り下さい。皆さんよろしくお願いします。(つづく)




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