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2025年12月09日大日乃光第2440号 貫主権大僧正様御親教
令和七年を振り返り心に残った本山でのご法話 

令和七年を振り返り心に残った本山でのご法話

誌面を変えた『大日乃光』

今年の『大日乃光』も最終号となりました。 今年の夏は三ヶ月ほど猛暑が続きましたが、十一月を迎えてようやく過ごしやすい季節となりました。急な気候の変化に体調を崩される方が多いと聞きますので、くれぐれもご自愛頂きたいと思います。

振り返りますと、今年の七月から『大日乃光』のあり方が大きく変わりました。 以前は月に三度、一枚物で白黒の誌面で発行してまいりました。現在は月に一度、見開きの冊子のような形で、文章のボリュームを増やして誌面もカラーに致しました。文字も少し大きくするなど、なるべく多くの人に目を通して頂きたいと試行錯誤を続けております。

祈願のお申し込みも、以前は裏面に掲載しておりましたので、鋏で切って記入しなければいけませんでした。『大日乃光』は蓮華院からの手紙と大切にされていて、鋏を入れると表面の文章や写真を切る事になるので忍びないと思われる方もおられると聞いておりましたので、祈願のお申し込み書などは別紙で折り込むように致しました。

月に三度の発行を一度にした事は消極的に映るかもしれませんが、読みやすくなった分、次の号まで何度も繰り返し読めるようになり、深く理解出来るようになったとか、ファイルなどに入れて保管がしやすくなったなど、好意的なお声も沢山頂いております。

全国的にも稀な継続性

『大日乃光』は今年の六月号で、第三種郵便物として二二三四号を数えておりました。 それまではお正月や行事の都合で休刊する事もございましたが、昭和二十六年の第三種認可から七十四年に亘り、旬刊誌として十日に一度、発行し続けてきたお寺は全国を見渡しても数える程しか無いと思います。それも皇円大菩薩様の教えや功徳を少しでも理解し、感じて頂きたいとの願いで、歴代貫主様と印刷局を中心に、日々の精進、努力の成果ではなかったかと思います。

まだ、たまにしか執筆していない私ですら、日中はまとまった時間がとれませんので、家族が寝静まったあと、朝方まで頭を悩ませながら執筆しております。 原稿が出来上がりましたら、印刷局が編集し『大日乃光』として形にしてくれます。

発行部数が多いので郵便局の方に集荷に来て頂きますが、以前は朝の六時から職員総出で、送り先の宛名を記した帯封を一枚ずつ糊付けしておりました。帯封に使う糊も鍋に小麦粉と水を入れ、焦げつかないようにかきまぜながら手作りしています。数年前からは業務時間内に作業を行っておりますが、基本的には同じ方法で続けております。

精進を続ける事の大切さ

この「続ける」という事は、仏教の教えの中でも大切なキーワードです。 悟りの世界、彼岸に達するのに必要な行いの事を「六波羅蜜」と言います。布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の事を指します。 この六波羅蜜の四番目、精進を簡単に言えば、「正しい目標に努力を惜しまない事」や、「全力で物事に取り組む事」を表します。

南米のエクアドルの先住民に伝わる民話に、『ハチドリのしずく』というお話があります。 森が燃えていました。森の生き物たちは われ先にと逃げていきました。でもクリキンディという名の ハチドリだけはいったりきたり、くちばしで水のしずくを 一滴ずつ運んでは 火の上に落としていきます。動物たちはそれを見て 「そんなことをしていったい何になるんだ」 と言って笑います。クリキンディはこう答えました 「私は、私にできることをしているだけ」 (※出典 辻信一監修 「ハチドリのひとしずく」光文社刊)

ハチドリのクリキンディは森の火を消すという目的のために、周りからは到底無理だろうと思われる事でも、自分に出来る事を見つけて精一杯続けます。 続ける事、精進の大切さを物語った民話でもあります。

電子媒体の是々非々

インターネットが普及して以来、デジタル化が進み、紙媒体の需要は大きく低下しています。大手新聞でも発行部数は全盛期の約半分になっているそうです。町の本屋さんも、この十年で三割も減少しました。 特にコロナ禍では学校が休校になったり、授業や宿題もタブレットで行う事が増えたそうです。

子供達が学習するには便利になり、効率化された事により、学力は上昇するかと期待されましたが、ここ数年で大きく低下したというデータも出ています。 様々な要因が絡み合っているとは思いますが、デジタル化が一つ関係しているとも考えられています。学校によってはタブレットでの学習をやめ、紙の教材に戻す判断をされた所もあります。もちろんスピード感や手軽さなどデジタルの優れている部分も多くございます。

貫主大僧正様はよく「不易流行」の話をされます。伝統や大切な部分は守りつつ、時代に合わせ、少しずつ形を変えなければならないと。 『大日乃光』は今年の七月にリニューアルしたばかりなので、また形が変わるかもしれません。しかし、皇円大菩薩様の教えや功徳に触れ、一人でも多くの方が前向きに、心豊かになられる事を願い、これからも精進しなければと感じております。

光明真言会でご法話

また今年一年で特に印象に残った事は、西大寺で最も大切な「光明真言会」で法話をさせて頂いた事です。 昨年は綱維を務めさせて頂きました。綱維は承仕も兼ねておりますので、松村長老様のお近くに身を置かせて頂く事が多く、その中で真如大僧正様の思い出話をいくつか話して下さいました。

「川原君の御祖父さんは法話が上手でね。光明真言会の法話では、いらっしゃる時にはいつも法話して下さっていたんだよ」と懐かしむご様子で、真如大僧正様に対し尊敬の念を持っておられるようで、大変嬉しく感じました。

ここ数年、綱維を務めた人が翌年に法話をする事が通例ですので務めさせて頂きました。 本山での法話という事で緊張も致しましたが、真如大僧正様もここで法話されていたと思うと大変有難くも感じました。 ここで最後に法話させて頂いた内容を掲載致します。

光明真言の功徳とは

こんばんは。西大寺一門で最南端、熊本から参りました。蓮華院誕生寺の川原啓照と申します。 去年、光明真言会で綱維を務めさせて頂きました。綱維は光明真言の統括でもあり、法要中は鼠色の衣で提灯礼拝を致しました。 綱維を務めた翌年は三日のお参りが終わりまして、法話をするという事が通例となっておりますので、しばしお付き合い頂きたいと思います。

私は昨日から西大寺に入りまして、荘厳からお手伝いさせて頂きました。 今、お参り頂いている皆さんは普段から西大寺に参拝されている方が多いと思います。いつもの本堂と何か変わった所にお気づきでしょうか?

堂内は法要中、行道致しますので、畳が敷いてあります。お堂の中心であります大壇の宝塔も国宝であります。 叡尊上人様が発願され建立されました金銅宝塔を荘厳しております。 ご本尊様、釈迦如来立像の須弥壇の荘厳が大きく変わっています。

須弥壇の上には大きな瓶がございますが、その中には何が納められているかご存じでしょうか? 正解はお砂、土砂が納められています。 この光明真言会は、正式には「光明真言土砂加持大法会」と申します。簡単に言いますと、光明真言の力によって土砂を加持する法要です。その土砂に向かい、三日三晩ひたすら光明真言をお唱え致します。

「光明真言」は、大日如来の秘密呪にして一切諸仏諸菩薩の総呪、根本陀羅尼とされ、真言密教では特に重要なご真言の一つでもあります。 光明真言の功徳には「罪障消滅、抜苦与楽」があげられます。このご真言で加持した土砂を、お亡くなりになられた方に散ずる事により、極楽浄土に往生出来ると言われてきました。お墓参りや仏壇でのお参りでは、この光明真言をお唱えしますと、ご先祖様にも供養が届くかと思います。また加持された土砂は、お守りとしても大切にされてきました。

普通に唱えると 「オンアボキャベイロシャノウマカボダラマニハンドマジンバラハラバリタヤウン」 と十秒ほどでお唱え出来ますが、法要中はこの光明真言を、一文字ずつ節をつけて、七、八分程かけてお唱えします。 その間、綱維はゆっくりと、立った状態から五体投地し、次の一回でまた元の状態に戻ります。その姿が提灯をたたむような姿に似ている事から、「提灯たたみ」とも言われております。

西大寺で感じた宗祖の気風

毎年、光明真言会に出仕しておりますが、本山の空気に触れると、改めて宗祖叡尊上人様の偉大さを強く感じます。 叡尊上人様は、改めてお釈迦様の説かれた仏教に立ち返り、戒律を守りながら西大寺の復興に取り掛かられました。

「興法利生」(仏教を盛んにし、民衆を救済する事)を理念として、具体的な菩薩行にも力を注がれました。今日で言う社会福祉活動の先駆者でもあられます。

叡尊上人様は文殊菩薩様を篤く信仰されました。本堂の左手に文殊菩薩様がいらっしゃいます。「三人そろえば文殊の智慧」と、皆さんにもなじみ深い仏様かと思います。 文殊菩薩様は「貧窮孤独」の民に姿を変え、信仰者の前に現れると経文にございます。

叡尊上人様は貧困、孤独、病気などで苦しんでいる多くの人々を文殊菩薩様の化身とみて、直接手を差し伸べられました。 特にハンセン病など、当時は差別の対象となっていた方々にも手厚く奉仕されました。 医療や科学の未発達な当時の状況を想像すると、断固たる決意であったに違いありません。 叡尊上人様は現在でも菩薩様として多くの人々の信仰を集め、その教えを通じて人々を導いておられます。

蓮華院で興法利生の実践

私の自坊であります蓮華院誕生寺では、昭和五十五年に先代貫主、真如大僧正様が同胞援助を提唱されて以来、国際協力支援活動を続けてまいりました。 とりわけ「一食布施」と申しまして、月に一度は意識して一食を断食し、その食費を募金して頂きます。

そういった募金による浄財を中心に、認定NPO法人れんげ国際ボランティア会を通じて様々なボランティア活動を行ってまいりました。 月に一度の断食と聞いて、特段難しい事とは思われないかもしれませんが、その断食を通じて飢餓に苦しむ同胞の苦難を少しでも経験し、その思いの下に社会に奉仕しようという志です。

もちろん海外だけではなく、震災などの天災があった時には、国内でもお手伝いさせて頂いております。 特に平成二十八年の熊本地震では、発災翌日から三ヶ月ほど、毎日現地に足を運び、百食から二百食の炊き出しを行いました。

炊き出しの必要が無くなると、仮設住宅で生活する方々に茶話会を開いたり、お祭りを企画するなど、被災者の皆さんが孤独にならないようにと活動してまいりました。 西大寺様からも沢山の募金、物資を送って頂きましたので、今日お参りの皆さん方のお気持ちも使わせて頂いたかと思います。改めて御礼感謝申し上げます。

こうして振り返りますと、私達の日々の活動は、叡尊上人様の教えが手本となっている事に気づかされます。 叡尊上人様は一二〇一年のお生まれです。約八百年後の今日でも、叡尊上人様の教え、志、おかげが私たち僧侶、信者さんの中で生きています。

仏様の種を生かして行こう

真言宗の教えの中に「即身成仏」という教えがございます。真言宗より以前には、輪廻転生を繰り返し、長い期間修行を経て仏になると考えられてきましたが、お大師様は、誰もがこの身このまま仏になれると説かれました。誰もが仏様になるための仏性、種を心に秘めています。お大師様や叡尊上人様のように大きな仏様になる事は難しいかもしれません。しかし小さな仏様にはなれるはずです。

例えば深い悩みがあり「今日は仕事をしたくないなぁ」「学校に行きたくないなぁ」と思っている人がおられるとします。 そういう人に朝、道ですれ違います。 その時に「おはようございます」と明るい笑顔で挨拶してみて下さい。 その挨拶を聞き、「朝からうるさいなぁ」と思う人も


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