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大日乃光






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2018年10月24日大日乃光第2222号
奥之院開創四十周年を機に、いま一度「功徳行」から始めよう

今年一年の相次ぐ激甚災害に人類の驕りを憂う
 
先日の台風二十五号など、度重なる台風で被害に遭われた方もおられる事でしょう。被災された皆さんには、心からお見舞いを申し上げます。有難い事に蓮華院ではほとんど被害は無く、平穏な日々を送っております。
 
さて、去る九月三十日は私と奥之院院代の啓照の二人で東海支部布教会のために名古屋に出向きました。あいにく台風二十四号が間近に迫る中、名古屋の会場には熱心な信者の皆さんがお見えになりました。いつもならば一時間以上法話を致しますが、今回は三~四十分程で終わり、信仰座談会は中止して早めに散会と致しました。
 
信者の皆さんは全員無事に帰宅されましたが、私と啓照は新幹線も空の便も止まっていたので、開けて十月一日の朝に名古屋始発の新幹線で帰路に着きました。
 
二年前の熊本地震も含めて、近年数多くの天災が日本を襲っています。海外でも地震や津波が起きています。これはさながら地球が人間の我儘に怒っているのではないかと思える程で、そう感じているのは私一人ではないはずです。
 
宇宙的な眼差しの皇円大菩薩様の道場観
 
地球を一つの大きな生命体と捉える考え方が「ガイア理論」として静かに広まっています。地球を超えて、もっと広い宇宙的な視点から我々人類を捉える考え方も広まっています。
この「宇宙的な視点」は、ある意味では神佛の視点でもあります。
 
現に私達真言宗では最高の佛である大日如来が、まさに宇宙の大生命の象徴ですから、その大日如来の視点はまさに宇宙的な視点でもあります。佛教はこの様な生命観や世界観を、真言密教として生み出しました。
 
私自身、毎朝の日課である全国の信者の皆さんの為に祈る祈祷では、「皇円大菩薩供養法」と言う、瞑想を伴った修法の中で様々な祈願を致します。この修法では、先ず自分自身を清め、周囲に結界(霊的なバリアー)を張り巡らせ、次に皇円大菩薩様の居られる世界を瞑想で有り有りと描き出します。これを「道場観」と言います。以下にその一部を記してみます。
 
『虚空(宇宙)ノ中ニ (バン)字アリ。 字変ジテ水大トナル。水大変ジテ地球トナル。地球ノ中ニ日本国アリ。ソノ中ニ桜ヶ池アリ。桜ヶ池ノ無限ノ池底ニ (ア)字アリ。 字変ジテ蓮ノ実ト成ル。コノ実ヨリ芽ヲ出ダシ、七百六十年ノ歳月ヲ経テ水面ニ至ル。水面ニ於イテ大白蓮華開敷ス。……ソノ姿ヲ沙門ニ擬シテ、胸ノ前ニ秘印ヲ結呪シ、衆生済度ノ大誓願ニ住シテ、結跏趺坐シ給フ…云々』
 
この様な瞑想の中で皇円大菩薩様を有り有りと目の前に描き、その後皇円大菩薩様を自分の胸の中に再び描き、目の前の皇円大菩薩様と自身の中の皇円大菩薩様を互いに融合させます。その他に様々な「身」「口」「意」に亘る瞑想を修した上で、皇円大菩薩様と一体になって皆さんからの様々な願いに応じた祈願を進めていくのです。
 
去る十月一日には、皇円大菩薩様の御分霊と皆さんの祈願札といくつかの法具をホテルで広げ、いつもの様に祈願を致しました。やむを得ず外泊する時は、宿泊したその場所で、先のようにお寺にいる時と同じ様に朝から祈願を修するのです。
 
 
奥之院開創と共に始まった月に一度の『功徳行』
 
さて、奥之院開創四十周年記念大法要(奥之院大祭)が迫ってまいりました。この中で前行として執り行なう「功徳行」について少しお話し致します。
 
この功徳行は、昭和五十三年の落慶法要の時から、毎月第一日曜日に修してまいりました。
ここで改めて功徳行の意義と、その功徳についてお伝え致します。
 
そもそもこの〝功徳〟という言葉はどのような意味なのかを、ここで少し説明いたします。
①優れた徳性、良い性質、価値ある特質。つまり、善を積んで得られる福徳の事。
②幸運の原因、福祉のもとになる良き行い、優れた結果をもたらす能力。
③善行の結果としての良き報い。また、良き行いを実行した結果、得られる恵み。
④ご利益、すぐれた点、利徳の事。
などと『佛教辞典』には解説されています。
 
つまり「功徳行」と称している当山独特の修行は、虚心に修して頂くことによって、知らず識らずの内に良き結果をもたらし、ご利益や福徳を授かり、恵みを頂ける修行ということなのです。
 
さらに詳しく説明しますと、まずは良き結果、つまりご利益を頂く条件としての心構えや心身の状態を作る事そのものが功徳であり、また、そのご利益や福徳に恵まれることを、「功徳」と言うのであります。
 
つまり、ご利益や福徳を頂く条件を作る事を「功徳を積む」と表現し、ご利益やお恵みを頂く事そのものを「功徳を頂く」と言い習わしているのです。
 
そして、これはまことに有難いことなのですが、皇円大菩薩様が学僧としての人生を送られた比叡山で法然上人など多くのお弟子さん達を育てられた場所が、何と「功徳院」であります。この「功徳院」は通称「法然堂」とも呼ばれ、現在でも比叡山の根本中堂のすぐ傍に建っています。この修行は先代真如大僧正様によって「功徳行」と名付けられました。誠に良い名を付けて頂いたと感謝致しております。
 
開山上人様が奥之院を建立されるに当って、こんな言葉を残しておられます。
「信者の皆さんが功徳を積む所として、奥之院を建立したのであります…」
まさに〝言い得て妙〟であります。
 
その意味では、来たる奥之院大祭には「功徳行」を自ら修し、目には見えないけれども大きな功徳を積んで、皇円大菩薩様の広大無辺の御霊力を頂いて下さい。そして数々の福徳を授かって頂きたいものであります。
 
心身を浄める功徳行入行の作法
 
これまで功徳行を修した事のない新しい信者さんの為に、少しその内容を説明します。
先ず白衣に腰衣を着け足袋を履き、輪袈裟を着け手には数珠を持ちます。女性は白い頭巾を付けて頂きます。つまり略式の僧侶・尼僧の姿になって頂くのです。衣装が変ると自ずから心構えも変ってきますので、これは大きな意味があります。
 
全員が揃った所で行列を組み、五重御堂に向かって静かに進んで行きます。その時、功徳行者の一歩一歩の足の下には蓮華の花が咲いていると思って静かに歩んで下さい。仁王門をくぐる時、左右の仁王尊に拝礼し、門を過ぎると皇円大菩薩様の大佛様と開山堂の開山上人様に向かってそれぞれ拝礼します。いよいよ道場である五重御堂に入る時も「これから佛様の胎内に入って修行させて頂きます」という気持ちを込めて丁寧に礼拝します。
 
堂内に入ると一人一本ずつローソクと線香を供えます。向かって右側から内陣に上がりますが、その時少量の塗香を授かり、両手で揉み、胸に少し当てて広げます。いよいよ内陣に入る所で〝香象〟という香炉を跨ぎ、お香によってご自身を下から清めます。この香象を跨ぐのは、古代インドの高貴な儀式で行なわれていた作法です。
このような作法は、私達日本人には少し「もったいない」気持ちにもなります。しかしこれは、日常から非日常の佛様の世界に入るために設えられた作法なのです。
 
こうして改めて厳粛な心が定まり、続いて佛様の智慧と慈悲によって浄められた浄水(洒水)を頭の頂に頂戴します。身も心も清めて「功徳行」が始まるのです。
行の内容は、次号でお伝えいたします。(続く)




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