2026年10月31日大日乃光第2451号 貫主権大僧正様御親教
僧侶・信者・参詣者一丸となって柴燈大護摩祈祷に祈りを捧げよう
僧侶・信者・参詣者一丸となって柴燈大護摩祈祷に祈りを捧げよう
皆さん、ようこそお参りでした。
この頃は朝夕すっかり涼しくなり、過ごしやすい気候になりました。それをこちらでは「身寒の良か」と、熊本弁で言い慣わします。
本誌が皆さんのお手元に届く頃は、十一月三日の奥之院大祭の直前になると思います。
奥之院では五重塔のお色直しが終わり、堂内も各層を全て整えました。
寺内では僧侶・職員一同、大祭の準備を粛々と進めております。
本山で先代の追善供養
去る十月四日、私は奈良の真言律宗総本山西大寺をお参りしました。
これは真言律宗で最も大切な行事である「光明真言会」が三日から五日にかけて営まれますので、その間に松村隆誉長老猊下にご挨拶をするためでした。
本来なら宗派内で住職になったり、または僧階が変わる人は、西大寺で辞令を受けるために、四日の夕方六時までに本山に行かなければならないのです。
私の場合は、四月三日の英照大僧正様の本葬儀の時に、長老猊下に導師として蓮華院にお越し頂き、住職辞令書を直々に拝受しましたので、今回はそのお礼とご挨拶の意味での参詣でした。
本堂にお参りに行きますと、幅三十センチ、厚さ二センチ、長さ二・五メートル程の板塔婆がお祀りされて、「キャ・カ・ラ・バ・ア」という梵字(地・水・火・風・空の五輪の意味)と、「為英照大和上 覚位 成三菩提也」と書かれていました。
現代語に訳して言えば、「英照大和上のために、仏の悟りの位において、最高の悟り(三菩提)を成就し成し遂げられますように」という供養の願いを表す言葉になります。
西大寺では、この光明真言会が営まれる十月三日までに遷化された宗派のご住職様や僧侶の霊を弔うための法要が執り行われるのです。先代もこうして本山で供養されました。
上の写真は、本堂から五百メートル程にある奥之院で撮った写真です。今年は先代を含め、お二人の供養が営まれました。その塔婆は、全て長老猊下直筆によるものでした。
「定額位」と「皆香衣許可状」にも、長老猊下が先代の事を大事に思っておられる事がよく伝わりました。
西大寺では長老猊下をはじめ、たくさんの方々にご挨拶出来ましたが、実は私自身は二十年ぶりのお参りなのです。
と言うのも、先代がずっと宗議会議員を務められ、十月三日の午前中に開催される宗議会に出席されて、午後二時に始まる光明真言会にも出仕されてきたからです。
ですから毎年十月三日の準ご縁日には、私が代理でお寺のお参りを勤めてまいりました。
先代は、この本山に上られた時に、将棋の米長邦雄永世棋聖をはじめ、様々な分野の著名人に出会われてご縁を結ばれたものでした。
その後、啓照と光照が光明真言会で「綱維」という大役を務めさせて頂きました。
西大寺は、奈良時代の称徳天皇による創建から千二百年以上、叡尊上人による中興からも七百九十年以上の由緒ある勅願寺であります。
光明真言会は正式には「光明真言土砂加持大法会」と言って、本尊前に安置された土砂を、僧侶衆が三日間、昼夜不断に光明真言を唱える事でお清めする法要なのです。
その清められた土砂を、埋葬する時に一緒に納めると成仏すると昔から伝わってまいりました。
つい三日程前に、西大寺からこの土砂加持の土砂を送って頂きました。
そしてつい先頃、蓮華院御廟の真如大僧正様のお墓の隣に、先代のお墓が完成しました。
今度の日曜日(十月十八日)に、この西大寺より賜わった土砂と共に埋葬します。
墓石には、真如大僧正様の時と同じく、先代の身の丈と同じ高さの五輪塔を安置します。
皆さんも奥之院にお参りされる時、御廟で先代のお墓にもお参り頂きたいと思います。
横綱大の里関が奉納土俵入り
さて奥之院大祭で最も大事な行事は柴燈大護摩祈祷ですが、一般の方にとっては横綱土俵入りの印象も強いと思います。
昨年は横綱豊昇龍関にお参り頂きましたので、今年は大の里関の奉納土俵入りに向けて、早くから取り組んでまいりました。先場所では大の里関が優勝されて、晴れてお参り頂ける運びとなりました。
ですが、今年は八日に九州場所が初日を迎え、三日の大祭はその直前という事になり、師匠の二所ノ関親方の方針で、朝の稽古を務められてからお参り頂く事になり、少し遅れますと連絡がありました。
今までは十一時半の詩碑序幕にもご参列頂きましたが、今年は午後一時半から二時位にお参りになるという心づもりでおります。
横綱奉納土俵入りと、相撲道場で子供たちに胸をだすかかり稽古は、今まで通り務めて頂けるという事でございます。
荒ぶる大地を鎮める儀式
令和八年は、七月末の熊本地震に始まり、千葉県をはじめ全国各地で豪雨による大規模水害が繰り返し、心安まらぬ出来事が続いております。国内だけでなく、ネパールでの大水害をはじめ、地球規模で天変地異が頻発しております。
このような中で、当地熊本に横綱大の里関をお迎えし、土俵入りを奉納頂ける事は、皆様に大きな希望と勇気をもたらすことでありましょう。
ご存知の通り、相撲は単なるスポーツ競技ではなく、神仏に捧げる神聖な儀式としての側面を古来より持ち続けてまいりました。
とりわけ横綱土俵入りの力強く大地を踏みしめる「四股(しこ)」の作法には、地中に潜む邪気を祓い、「荒ぶる大地を鎮める」という極めて重要かつ神聖な意味合いが込められています。
横綱が全身全霊で踏みしめる四股の響きは、まさに揺れ動く大地を鎮め、災禍を退け、人々の心に安寧をもたらす「地鎮」の儀式であり、祈りそのものに他なりません。
横綱奉納土俵入りは、度重なる災害で傷ついた大地と、そこに住む生きとし生ける衆生を慰める大きな力となることでしょう。
荒ぶる自然が穏やかな息吹を取り戻しますように、そして安らかな日常が戻りますようにと、皆さんと共に万感の思いで祈りを捧げたいと思います。
「地球寂静」の祈りを掲げて
その上で、この度の柴燈大護摩祈祷では「地球寂静」の祈りを掲げ、皆さんと共に御本尊皇円大菩薩様に奉りたいと存じます。
皆さんはこの「地球寂静」という言葉を、先代のご法話や願文で、度々耳にされてきたことと思います。
「地球寂静」という言葉は、地球そのものが静かで穏やかな状態を取り戻し、生きとし生ける命あるもの全てが自然と調和して生きられる世界という意味です。
この言葉は現在当山を拠点として、れんげ国際ボランティア会(アルティック)と共に熊本地震の被災地支援活動に手を携えて尽力して頂いておりますSVA(曹洞宗ボランティア会)の生みの親で、「泥の菩薩」「仏教NGOの先駆者」と称えられた故・有馬実成師の残された言葉であります。
昭和五十七年頃、先代がインドシナ内戦に苦しむカンボジア難民キャンプを視察された際に、既に支援活動に身を投じておられた有馬師に出会われました。
そこで有馬師は宗派の違いを越えて、鎌倉時代に「生身の菩薩」と称えられ、弱者救済に邁進された真言律宗の宗祖、叡尊上人の教えこそが、ご自身の活動の原点であると先代に明かされたのでした。
その深い人間性に感化された先代は、アルティックの活動を通じて国際協力に邁進されると共に、度々師のエピソードをご法話されたのでした。
以来、蓮華院では六月大祭と十一月大祭の願文の中に、「地球寂静、環境調和」という願目を立て、唱え続けてまいりました。
「布施大道」を実践しよう
この「地球寂静」という言葉と共に、先々代の「布施大道」の言葉を合わせて掲げたいと思います。
「布施大道」は、私たちが「布施の心」、即ち「思いやりの心」、「感謝の心」を持つことが大切なんですよ、という意味の言葉です。
私は本誌九月号で、熊本地震という未曾有の大災害に当たり、「無財の七施」という、何もなくても誰にでもできる「布施」の教えを、支援や募金をする側も、それを受ける側も、共に心掛けて行きましょうと提唱しました。
それは私達真言行者による「身・口・意」の「三密加持」の行法、身に仏様の印を結び、口に御宝号を唱え、心に仏様を思う形ある「有相の三密行」に対し、在家の方が日常生活の中で具体的に実行できる、決まった形の無い「無相の三密行」の実践であります。
この「無財の七施」をもう一度、ここに掲げたいと思います。
一、眼施(げんせ)…優しい思いや りの目で接すること。
二、和顔施(わがんせ)…穏やかで 優しい表情で接すること。
三、言辞施(ごんじせ)…優しい温 かい言葉で接すること。
四、身施(しんせ)…身体で出来る 奉仕。
五、心施(しんせ)…思いやりの心 をこめて人と接すること。
六、床座施(しょうざせ)…座席を 譲ること。
七、房舎施(ぼうしゃせ)…家に人 をお迎えして温かくもて なすこと。
大祭の祈りの中で、先ほどの「地球寂静」を願い、「無財の七施」で「布施大道」を実践する事。これを信者の皆さんと共に、ぜひ実践して行きたいと思います。
参詣者のお手本になろう
皇円大菩薩様を信仰し、ご利益を頂かれ、救われた経験をお持ちの信者の皆さんは、皇円大菩薩様の絶大なる御霊力をよくお分かりです。
その広大無辺なご利益を、奥之院大祭で、ぜひ他の方と分け合いましょう。
お連れの知り合いの方に、さらには横綱を目当てにお参りされた参詣者の方々にもみんなで分かち合いましょう。
そして信者さんには、ぜひ参詣者のお手本になって頂きたいと思います。
信者さんは、普段からご法話や教えに倣って実践されている方が多いと思います。
来たる奥之院大祭で、信者さん同士や、参詣者に対して、ぜひ身をもって、明るい笑顔や優しい言葉、思いやりのある行動で接してみてください。
信者さんが参詣者のお手本になると、皆さんの熱意に応じて、一人でも多くの人が真剣に祈るようになり、祈りのエネルギーがより多く集まります。
信者さんのお手本によって、祈りのエネルギーが少しでも大きくなるようにお参りして頂きたいと思います。
祈りを結集する奥之院大祭
来たる奥之院大祭で、柴燈大護摩の浄火が龍の如く天に立ち昇り、一帯を清めた後、道場の皇円大菩薩様の御前で横綱土俵入りを奉納して頂きます。
「布施大道」の心で、燃え盛る柴燈大護摩に「地球寂静」の祈りを託し、横綱の力強い四股によって大地を鎮める。
その祈りが一つに凝結する時、願いは必ずや御本尊様に届き、荒ぶる天地を和らげ、平安な日々に至るものと確信致します。
どうか皆さん、十一月三日の大祭にはぜひ奥之院にお参り頂き、共に手を合わせて熱祷を捧げて頂きたく存じます。
僧侶と信者、参詣者の祈りが一つになる時、それは計り知れない大きな力となり、この世界を明るく照らす光となる事でしょう。合掌

大日乃光(月3回発行)を購読されたい方は、
右の「お申し込みはこちら」からお申し込みいただくか、
郵送料(年1,500円)を添えて下記宛お申し込みください。
| お問い合わせ |
〒865-8533 熊本県玉名市築地玉名局私書箱第5号蓮華院誕生寺 TEL:0968-72-3300 |