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大日乃光






大日乃光

2020年02月10日大日乃光第2264号
崇め敬う心を大切に、一歩一歩佛様に近づいて行こう

宮司さんに称賛された皇室への篤い崇敬の念
 
本誌が発行される二月十一日は我が国の「建国記念の日」です。そこでこの国の成り立ちに関するお話を致します。
 
これは毎年の事ですが、昨年の十二月中頃にお歳暮を持って疋野神社の宮司でもあられる仲人さんに年末の挨拶に伺いました。疋野神社は県内では数少ない式内社の一つです。式内社とは十世紀に『延喜式』の神名帳に記された国家公認の社格を持つ歴史の古い神社で、疋野神社は県北では最も格式の高い、玉名市を代表するお宮の一つです。
 
その疋野神社の宮司さんが、かつて私達夫婦の仲人さんをして下さいました。こんな事から毎年私がお歳暮を持って伺います。そこでいつも居間の方に通してもらってお茶を飲みながら、しばらくお話をするのです。そんな中、今年は「光祐さん、あんたとこの大僧正様は大したもんだ!」と言われるのです。
 
宮司さんは『大日乃光』をずーっと読まれています。そして今回伺った時には『大日乃光』に赤線がたくさん引かれていて、「もうこれは永久保存版にとっとかないかん!!」と言われました。
 
何の話かと言えば、十一月三日の奥之院大祭で神佛習合の柴燈大護摩祈祷の後、貫主大僧正様が話された内容でした(十二月一日号と十一日号に連載)。その中には天皇陛下の即位礼正殿の儀の話や俊律師と小岱山、〝御寺〟泉涌寺にまつわる話など、この国が皇室を中心に形作られ、それを神道と佛教が互いに協力して支えてきた歴史が詳しく記されています。そういう話をされて、「なかなかこんなにちゃんとまとめた文章はないよ。これを読めば良く分る」とお宮の宮司さんがそう仰るのです。
 
貫主大僧正様は、なぜそれほどまでに天皇陛下の事を大事に思い、度々書かれ、また非常に近しく感じておられるのでしょうか?
 
佐賀の東妙寺ゆかりの数奇な縁
 
その理由の一つに、佐賀の東妙寺の法印(住職)を先代真如大僧正様と、二代続けて勤められた点が挙げられます。佐賀の東妙寺は第九十一代後宇多天皇の勅願寺なのです。
 
鎌倉時代に後宇多天皇がここにお寺を建てなさいとお命じになりました。何のためか?当時、大陸から元が攻めてこない様に「敵国退散」の祈祷寺を建立するためでした。
 
現在の東妙寺は随分内陸部に在りますが、それは川で自然に土砂が堆積され、人工的にも埋め立てされたからです。ですから八百年程前までは東妙寺の近くまで田手川経由で海から舟が入って来ていました。
 
敵国退散のお寺は、その多くが港の近くなど、交通の要衝に建立されていました。元軍がどこに上陸してくるかわからないので、同じ頃に有明海沿岸のここ玉名にも、同じ目的で蓮華院が建立されました。
 
少し時代が下り、南北朝時代に後醍醐天皇の皇子、懐良親王が九州に下向、南朝の勢力を築くために転戦される中で母親の菩提を弔うために東妙寺に祈願されて、直筆で『梵網経』というお経を納められました。これは今、国の重要文化財に指定されています。それを写真に撮ったものが今も東妙寺の本堂の前の方に掲げてあります。
 
こういった東妙寺をめぐる皇室ゆかりの深いご縁があって、天皇陛下を一般の方々よりも身近に感じておられるのです。
 
そして今からちょうど四十年前(昭和五十五年)、現在の天皇陛下(当時、浩宮親王殿下)が学生時代に佐賀に行啓されて、鳥栖の方へ上がる途中東妙寺に立寄られ、お参りされました。まだ真如大僧正様が東妙寺の住職を兼務されていた頃で、英照大僧正様もその時一緒におられたそうです。その時、浩宮殿下は松の木をお寺の南側にお手植えなさいました。
 
皇室の行く末についての軽々しい議論に憂慮
 
次に、真言律宗は奈良の西大寺が総本山です。西大寺も称徳天皇(第四十八代)が国家安泰の為に造られた勅願寺です。その前に称徳天皇のお父様、聖武天皇(四十五代)が東大寺を造られています。
 
称徳天皇は女性天皇です。この方を含め、歴史上、八人の女性天皇がおられます。以前、貫主大僧正様は、女性天皇はだれ一人結婚しておられない事を話されました。ですから「愛子様に即位して欲しい」などと軽々しく言っている人は、愛子様に結婚するなと言うに等しい事なのですと話されました。
 
つい最近は副総理兼財務大臣の麻生さんに失言がありました。日本は「二千年に亘って一つの国で、一つの場所で、一つの言葉で、一つの民族、お一人の天皇という王朝、百二十六代の長きに亘って一つの王朝が続いている国はここしかありません」と。するとアイヌの人達から、昨年五月にアイヌ民族を日本の先住民族と法律で規定したばかりではないかと抗議を受けました。
 
日本民族は北方(大陸)由来と南方由来の二つの源流が混ざっていると言われています。特に南九州の人は昔は「熊襲」と名乗り、南方系の血が濃いと言われています。また縄文人と弥生人が混じり合ったのが日本人と、そういう風にも言われています。
 
麻生さんにも失言や思い込みがあるようですが、それでも約二千年、今の皇統が百二十六代続いた事は、やはりすごい事です。
 
名家ならではの家系の重み
 
明治時代に、初代の神武天皇が即位された二千六百八十年前の一月元旦を新暦の日付に直し、二月十一日を「紀元節」と定めました。戦後GHQによって紀元節は一旦廃止されましたが、昭和四十一年から「建国記念の日」として復活しました。
 
そんな長い日本の歴史の中には、日本の三大名家というのがあります。天皇家と島根の出雲家と熊本の阿蘇家です。
 
阿蘇家は九十三代続いています。昨年、阿蘇神社の宮司職の代替わりがありました。先々代宮司の阿蘇惟之さんは七年程前に亡くなられて、この度ご子息の阿蘇惟邑さんが後を嗣いで宮司に就任されました。阿蘇家は九十三代男子直系でつないで来たのです。ですから皇室と同じ様に血筋を遡れば一人の人に繋がるのです。
 
有難い事に、新宮司は私の家内を通じて甥に当たります。当山の啓照、光照と阿蘇惟邑さんは従弟同士ですから、同じ血が四分の一ずつ混ざっています。本当に有難い事です。
 

天皇陛下と共に国家万民の安寧を祈り続ける
 
そして天皇陛下が毎日なされている事は国の安全をお祈りする事、国民の安寧、幸せを祈る事で、これが天皇陛下の主たるお仕事なのです。公務として表に出られるのは、むしろごく一部なのだそうです。
 
毎日皇室の御先祖様でもあられる神様にお供物をお供えしてお参りをされて国の安泰を願われる、国民の安寧を祈られるという事が天皇陛下の日々の最も重要なお勤めなのです。
 
一方で五十二代嵯峨天皇の御代に、弘法大師空海上人様との深いご親交の中で、天皇陛下の中心的なお勤めである「国家安泰」の祈りを弘法大師が「後七日御修法」として体系化されました。
 
以来全国の真言宗のお寺では、天皇陛下と同じく日本国家の安泰と国民の幸せ、更には天地自然の平穏と世界の平和を祈り続けているのです。それに加えて蓮華院では全国の信者の皆さんの幸福とご健康を日々祈っているのです。
 
三年前、上皇陛下は体力の衰えを理由に譲位のご意向を示唆されました。やはり毎日のお勤めが滞るとあい済まんというお気持ちで、若い現天皇陛下に受け継がれたのです。
 
日本人の魂に刻まれた天皇陛下への崇敬の念
 
天皇陛下がまだお元気な内にご譲位なさるのは、明るくて良いですね。明治以降は必ず先代が崩御されてから受け継がれてきました。そうすると一年程喪に服し、その後即位の儀式が行われます。そして崩御された翌日から新しい元号という事ですから、なんとなく即位の時には華やかさがなく、寂しい思いをしながら新しい御代を迎えたものでした。
 
しかし今回の即位の礼は非常に明るく、五月の時も十一月のパレードの時も非常に良かったな、嬉しいな、これから新しい御代になって新しい動きや新しい流れが起きそうだという期待感を皆さんも持たれた事だろうと思います。
 
そういう事で天皇陛下を尊ぶという意味で、昔はどの家庭にも天皇皇后両陛下のお写真(御真影)が掲げてありました。戦後、そういう風習はほとんど無くなったようですけれども、若い人達も今の天皇陛下には非常に親しみを抱いているようです。しかし一方で、その尊さや有難さはあまり感じていないようです。
 
ところが先の即位式で「崇めなければ」という気持ちが人々の間に沸き起こった。あのように特別な装束を着て姿を現されると、背広を着て人前に出られる時とは全く雰囲気が違って、本当に崇めたくなる様な思いがするのだろうと思います。佛様や神様をお祀りする事と、天皇陛下を大事に尊ぶ事は私達日本人には欠かせないと思います。
 
日々のお参りを大切にして己の良心に恥じぬ生き方を
 

人間はどうしても、大切に思うもの、尊ぶものがないと傲り高ぶって傲慢になり、失敗をしでかします。普段から佛様や神様、そしてご先祖様がいつも自分を見て下さっていると思っていれば、悪い事は出来ないものです。
 
昔は悪い事をしたら「佛壇の前でご先祖様に謝って来なさい」と怒られたものでした。自分勝手な良し悪しの判断ではなく、佛様や神様やご先祖様から見ての良し悪しの基準というものを持って生きなければなりません。
 
ですから自分の良心を偽っちゃいかん。陰でも悪い事をしちゃいかんと。真言宗では、生きている今、佛様と同じ心にならなければいけませんよ!という「即身成佛」を説きます。少しでも良い事を積み重ねて佛様の元に行けるように励まねばならないのです。
 
どうぞ皆さんも御本尊皇円大菩薩様を大切に、ご先祖様や神様、天皇陛下を大切にする心で日々の生活を送って頂きたいと思います。合掌




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