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大日乃光






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2020年05月15日大日乃光第2274号
被災住民に寄り添い続けたアルティックの復興支援活動

四年目を迎えた熊本震災犠牲者追善供養
 
今日は熊本地震の犠牲者追善供養を一緒に執り行いました。四年前の四月十四日、二十一時二十六分が前震、十六日の一時二十五分が本震でした。死者は二百七十三名、負傷者は二千八百九名に及び、全・半壊の被害住宅は四万三千三百八十六棟に上りました。
 
今日はこの熊本震災で、認定NPO法人れんげ国際ボランティア会(ARTIC/アルティック)と、蓮華院本体の果たした役割を振り返ってみたいと思います。
 
地震直後から一万食を配膳した第一フェーズの炊き出し支援
 
前震のあった四月十四日、私は奥之院副院代の光照を帯同し、長崎で九州三十六不動霊場会の総会に出席していました。三時からの総会、六時からの懇親会に出席し、九時には疲れてすっかり休んでいました。翌朝テレビをつけると熊本の惨状が映り、すぐに光照に連絡して朝食を摂らずに帰路に着きました。
 
島原~長洲間のフェリーも混雑し、一便遅らせてようやく帰山出来ました。その間、寺務所やアルティックの久家君と連絡をとりましたが、すでに久家君は被災地の調査に出ていました。
 
前震の翌々日(十六日)から炊き出しができるように段取りを進め、野菜の買い出しなどの準備を始めました。初動の被災地支援には、温かい炊き出しが一番喜ばれます。阪神淡路大震災と東日本大震災の経験では、パンなどはすぐに手に入りますが、豚汁や味噌汁などの温かい汁物はすぐには入手できないのです。
 
益城町に九州ラーメン党というボランティア団体があります。東日本大震災でも一緒に被災地を支援した事のある団体です。今回はその団体に、支援する場所の都合を依頼しました。
その最中の十六日には更に本震が起こり、炊き出しは十七日に始めましたが、現地への往復だけで七時間もかかりました。
 
この第一回目の炊き出しの時は、行政や支援の手がまだ入らず、現地には何も食べられる物がありませんでした。またラーメン等の蓄えがあってもオール電化の家が多く、食事が出来なかったという方がたくさんおられました。
 
こうしてアルティックの活動は益城から始まりましたが、その後、熊本市の東区に対象地域を移しました。当時、益城や南阿蘇にはマスコミがたくさん集まり報道していたためボランティアが大勢来られて物資も早く届いていました。そこで支援の手が届きにくい熊本市の東区に移したのです。(実際には東区の被害者が一番多かったのです)
 
その後も職員を始め信者さん方にも朝五時から野菜を刻むお手伝いをして頂いて、約一ヶ月間、炊き出しを続けました。その後、蓮華院で炊いて配布先の人数に合わせて配達しました。こうして最終的には約一万食を提供しました。
 
全国からのボランティア団体のプラットフォームとなった蓮華院
 
やがて蓮華院を拠点に様々な団体が活動を始めました。真っ先に駆けつけてくれたのは長年共に海外で活動を続けて来た(公社)シャンティ国際ボランティア会(SVA)で、アルティックの活動への支援のためにスタッフを派遣して頂きました。
 
次に新潟から(公社)中越防災安全推進協議会と、長岡市の社会協議会と生涯学習文化課から調査に来られました。その宿泊施設として蓮華院に打診があったのです。
 
静岡県ボランティア協会もまず調査に来られて当山に宿泊し、熊本市の南部の嘉島地区を支援するために、さらに十五名ほどのスタッフが派遣されました。最初は本院、三回目以降は奥之院での宿泊になり、五回ほど静岡から来られました。この他に特に多かったのは、曹洞宗福岡・佐賀青年会の若い僧侶の方々でした。
 
また横浜の東芝水耕栽培工場から、約七千食分のレタスなどの無菌野菜を被災地への支援に提供して頂きました。新鮮な生野菜が現地では大変喜ばれました。また日産自動車からは、活動の際に使用する電気自動車を二台ご提供頂きました。
 
蓮華院には沢山のボランティア団体が泊まり込み、ここをプラットフォームにして情報を共有し、色んな被災現場に出発する一つの基地になっていたのです。その間、全国からのボランティア団体が延べ二百五十人程、毎日二、三十人のペースで宿泊されました。その他の実働ボランティアも延べ千八十五人程来られ、色んな方にお手伝いをして頂きながら活動を続けました。
 
南阿蘇村で手を組んだ足湯傾聴ボランティア活動
 
鹿児島の法城院というお寺からは、東日本大震災でも一緒に行なった、足湯で足をマッサージしながら不安やストレスを取り除く「傾聴ボランティア」の呼びかけがありました。当時は鹿児島から玉名へのルートが寸断されていたので、南阿蘇村で一緒に活動する事になりました。
 
蓮華院からは、「全国将棋寺小屋合宿」でお世話になっている毎日新聞社の仲介で、メグミルクさんからの七千パックの野菜ジュースも手土産に、足湯の傾聴ボランティアが始まりました。地元の九州看護福祉大学にも声をかけ、カッター部の学生さん達と口腔保健学科の学生さん達が中心となって、傾聴ボランティアを一ヶ月以上頑張ってくれました。
 
アルティックでは熊本市の東区全体の避難所の情報を常に調べ、現場との意思の疎通を図りながら支援を続けました。炊き出しや茶話会、足湯による傾聴ボランティアなどを二十七ヶ所の避難所で、約三ヶ月間継続致しました。
 
第二フェーズは仮設住宅での被災者の生き甲斐づくり
 
その後、九月からは仮設住宅での活動に移行しました。この頃からスタッフを二人雇い、久家君を中心に三人で支援を続けました。殆どの仮設住宅には集会場が出来ていて、仮設に入っている人達の孤独死を防ぐという事、そして自立出来るように支援をするという事で、健康の為の体操を指導したり、茶話会などを企画しました。
 
阪神淡路大震災でも東日本大震災の時も感じた事は、被災者がボランティアからしてもらうばかりでは、中々被災者自身の生きる力が湧いて来ないという事に私達は気付いていました。逆に自分の出来る事で人に喜ばれたり、人の役に立つような得意な技術を活かす機会を一つでも多く設けることで、被災者自身が元気になれます。
 
そこで仮設の中で色んな技術を持った人を探してその人に先生になって頂く。例えばパッチワーク教室やフラワーアレンジメント教室など、バラエティ豊かな活動を行う事で、住民同士の交流が良くなると共に、被災者自身に主体的に活動する意欲が湧きます。
 
アルティックでは以前から「やってもらうだけでなく、自分が出来る事は自分からやりましょう」「人の役に立てる事があれば自分が動いてやりましょう」を活動の指針として生き甲斐作りを目指して来ました。そうすればそのコミュニティが非常に良くなり、自分自身も嬉しく楽しくなり、生き甲斐が感じられるようになるのです。この様な、被災者自身の自立を促すような支援は、アルティックが海外で長年行なって来た様々な活動の基本精神でもあります。
 
十一月位から約一年間、二人の女性が固定でスタッフになりました。一人は元看護師さんで、一人はマッサージが得意で、集会所でアロマテラピーやカウンセリング、マッサージをして、年配の方々から大変喜ばれました。健康維持の為の体操や、子供教室、けん玉大会なども行いました。他にも仮設では、例えば被害届の書き方や手続きなど、そういう事が分からない人を正しく役所に繋ぐ事も大事な仕事になりました。
 
 
様々な温情に支えて頂いた第三フェーズの玉名温泉小旅行
 
それから小旅行も企画しました。避難所で希望者を募り、玉名温泉に送迎するというものです。
 
熊本市内では余震が続き、常に緊張状態に置かれるのと、仮設住宅からもちょっと離れたいという声が上がり、玉名温泉の竹水苑さんに相談したら、社長さんが「日頃のご恩をこういう時にお返ししたい」とご賛同頂き、無料で温泉に入れて頂きました。
 
後半になると昼食や、奥之院にも足を延ばすなど内容が広がりました。その際も竹水苑さんには「出来る事を出来るだけやらせて頂きます」と過分なご厚情を賜りました。また色んな方がマイクロバスの添乗のボランティアに来て頂きました。
 
仮設住宅での継続的な支援活動は、こうして一年十ヶ月程で一応終りました。その後も久家君が仮設に訪ねて行き、秋祭りなど、皆が楽しく元気になれるような活動のサポートを、昨年の秋頃まで続けました。
 
四年目の復興を見守りつつ新たな活動の糸口を模索
 
本当に色んなお付き合いの中で、この熊本震災の支援活動が出来ました。国内では阪神淡路大震災や東日本大震災でご縁の繋がった様々なボランティアの方々が蓮華院に来られて、蓮華院を拠点に様々な支援活動が行われました。
 
ノウハウも少しずつ蓄積されて、阪神淡路大震災の教訓で、東日本大震災ではボランティアセンターが有効に活かされました。熊本震災では社会福祉協議会から仮設住宅の管理人が派出されましたが、急に雇われた素人の方がほとんどで、大変苦労した面もありました。
 
四年が経って、熊本城も随分復旧してきました。益城町でも熊本高森線が四車線化されるなど整備が進んだようです。南阿蘇への道も俵山トンネルや桑鶴大橋、長陽大橋などが復旧し、この新型コロナウイルスパンデミックがなければ、もっとスムーズに復興していただろうと思います。
 
アルティックでは、今回の新型コロナウイルス(武漢肺炎)パンデミックに対してどんな活動が出来るのかを、理事の皆さんを始め、多くの方々に知恵を頂きながら、何らかの支援活動を始めなくてはと考えております。その時には信者の皆さん方にも是非ご協力とご参加を、心よりお願い申し上げます。合掌




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