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大日乃光






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2020年06月27日大日乃光第2277号
コロナ禍を超えて更なる真剣な祈りの実践を

異例ずくめの六月大祭で信者の皆さんから真心を頂く
 
皆さんこんにちは。お久しぶりです。
 
さて、今年は異例ずくめの六月大祭となってしまいました。龍火くだりもありませんし、体験談発表もない。そして皆さんの心を一つに合わせるような百万遍大数珠廻しもありません。そういった意味では異例につぐ異例。おそらく今後もこういう事は滅多に無いだろうと思います。
 
その代わりに全国の信者の皆さんから奉納頂いた九百八十九巻の『般若心経』を、御本尊皇円大菩薩様の御宝前にお供えしています。
 
今朝、廊下を通って貫主堂に移動している途中、一組の信者さんのご夫婦にお会いしました。「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」と本当に喜んで頂いて、私もこんな風に待望して頂いているのだな、全国の信者の方々もこのように私の事を心配して頂いている。元気になって欲しいという願いを持っておられるに違いないと、あらためて実感致しました。
 
病床より祈り続けて、 一千万遍唱える御宝号
 
さて、少し私の事を話します。
 
去年の八月一日から十二月二十四日まで入院治療を続けました。それなりに効果を得て帰って来たのですけれども、十一月三日の奥之院大祭、それから一月十三日の初まいりと、これだけは何としても出なくてはという必死の思いで出仕し、こうして法要でお話をしたのですけれども、その後、調子が悪くなりました。頭を上げるとふらふらする様な感じです。
 
実際八月一日に緊急入院した時には、下血が止まらず一週間位続いたのです。途中で、「おそらくこれが続けば…。これが最後の薬です。これ以外に出血を止める薬はありません。これで止まらなかったら命はないと思って下さい」と、家族の者は聞いて愕然としたわけです。私としても闘病生活に入って一日、二日くらいは眠らせる薬とか色んなものが入って意識がしっかりしませんでした。
 
そんな中でも日々の御祈祷とお尋ねは、何とか欠かさず続けられました。しかし、「このままではいかん!」と思って、八月三日からずっと御宝号を一日一万遍以上唱え続ける事にしたのです。
 
その後、八月二十三日の準御縁日法要には何としても皆さんに顔を見せたいと思い、病院から日帰りで帰って来たりもしました。日々御宝号の念誦をずっと続けている内に、「これはこのまま続けよう。まずは百万遍位まで続けよう」と思うようになりました。
 
そして八月下旬から再び治療が始まり、それからずっと、外出禁止どころかベッドからも殆ど起き上がれない様な状態が続きました。九月から四ヶ月間治療を続け、十二月二十四日に退院する事が出来ました。それ以来、大晦日は勿論出られず、一月十三日の初まいりには何としても出ようと思って、己に鞭打つ思いで出て来たわけです。
 
そんな中で、十二月いっぱいで唱えた御宝号の数は三百五十万遍になりました。それから三月いっぱいまでかかって五百万遍唱えました。実はその頃から、コロナ禍が始まったので数を増やしたのです。
 
「世界中が大変な事になっている。これはいかん!!何としてでも佛様のお力を日本全国、また世界全体に拡げて頂かなければならない!!まず、何よりも信者さん達に元気で居てもらわなければ!!」と、自分自身の事よりも、疫病退散を中心に祈り、唱え続けて、五月末で七百五十万遍となりました。そして現在、今朝で八百十万遍。
 
おそらく年内には、間違いなく一千万遍は唱える事になると思います。これは私に課された大切な修行と思って続けて行きます。何とか日本国内から、世界から、コロナ禍が終息するように必死で拝んでいます。
 
天皇皇后両陛下の祈りは日本国民全ての祈りの象徴
 
日本政府が様々な対応をする中で、普通の人は自分の事に精一杯で、何とか自分がこの病気にかからない様にとか、何とか自分の会社が倒産せずに済むようになどと考えておられるかもしれません。皆さん方も歯をくいしばって懸命に自粛をして、極力家の中にいる様にする毎日が続いたわけです。
 
国民全体、皆が心を合わせてコロナが蔓延しない様にと、これほどまでに多くの方々が気持ちを廻らせたことは他にないと思います。その中で私はふと思ったのです。
 
コロナ禍はこれだけ世界中に広がっている。アメリカに至っては日本の百倍以上です。これはもう大変な勢いです。他の国では我々の感覚よりももっと強い恐怖心があり、色んな不安もあり、そして暴動さえもが起こる程です。暴動の原因にはまた別の事情があるのですけれども、いずれにしても、これはやはり人々の心が安定していない事に起因していると思うのです。
 
そこで私はふと思ったのです。何かと言えば、去年の五月一日、皇位継承の「即位礼正殿の儀」がありました。おそらく日本人の九割以上の人が、高御座に立たれて陛下が帳を開けられてこの世にお姿を現された。新天皇として、この世に立ち姿をお示しになりました。
 
その直前まではひどい雨が降っていたわけです。ところがその儀式の寸前に日が射して、虹が架かった。その情景をテレビやマスコミを通して皆が観ました。「うわー!!さすがだな天皇陛下!!」。「日本の天皇陛下とは大したものだ!!」と多くの人が思ったはずです。外国からの賓客もそう思われたはずです。
 
その様に、あの日を境に天皇陛下は日本国民全体のお父さんとして、皇后陛下は国民全体のお母さんとして、務めを果たし始められたのです。その務めとは何なのか?
 
国民全体、日本各地、北から南まで津々浦々の全ての国民が、どうか平和であります様に、どうか病気になりません様に、どうか日々の家庭の営みが健やかであります様にと、国民の事を一心に祈って頂いているはずです。例えば上皇陛下は先の東日本大震災の際に、テレビを通じて御言葉を述べられました。あれを聞いて多くの人はほっとしたり、慰められたり、勇気をもらったはずです。
 
玉体安穏を祈り続けた全真言宗僧侶の祈り
 
思い返せば、私は天皇陛下と非常に精神的に近しいご縁を結ぶ好機があったのです。しかし、今回は私のこの病気でそれが叶いませんでした。
 
それは、千二百年前から連綿と続いている天皇陛下の、また皇族の方々の身体健全、そして国家安泰を祈る「後七日御修法」という重要な儀式です。一月八日から一週間に亘り、高野山を始め東寺、仁和寺、醍醐寺、西大寺など真言宗の十三の本山の管長クラスの方々が集まって、そこで真剣に天皇陛下のご健康と国家安泰を祈ります。そこには天皇陛下の御衣を勅使の方が持って来られます。それを奉安して皆で天皇陛下のご健康を祈るのです。これを「玉体安穏」と言います。
 
この法要に一番最初に参列したのは昭和五十九年でした。その時はまさに管長猊下の随行として参加しました。
 
そして実際に、昨年の夏前に本山から電話があり、是非あなたにその中で息災護摩を焚いて頂きたいという依頼があったのです。その時の私は何故だか分からないけれども、「ちょっと難しいと思います」とお受けしなかったのです。本来なら喜んで承るのが当然なのですが、何故かその時は、勿体なくもお断りしたのです。
 
体調不良ではなくて、その時、変な予感さえ無ければ天皇陛下の玉体安穏を、護摩を焚きながら一週間過ごすことが出来たのにと無念に思いながらも、今年の正月の間はことさら真剣に、自分の部屋で、また貫主堂で祈り続けました。
 
疫病を過少に食い止めた皇室と国民一丸の祈り
 
私には天皇陛下御自身に国民を励ます様な言葉を発して欲しいという思いがあります。
それは何故かと言えば、皆さん方も何となく思っておられると思いますが、世界中にこれだけコロナが蔓延する中で、日本における感染者の方と、そして非常に残念で悲しい事に、亡くなられた方々も八百人を超えています。ではありますが、これは世界からみたら奇跡に近いほど少ない数だと思います。
 
それは何故なのだろう。色んな人が色んな事を言っています。衛生管理が良いとか、よく手を洗う習慣があるとか、マスクをつける事を厭わないとか、そういう事がピシッと出来る。そして政府が自粛を促せば多くの人が自ら進んで自粛する。要するに真面目。命令して罰則を与えなければ自粛出来ない国が殆どなのですが、日本人にはそういう事が必要ありません。そういう国民性もあるのでしょう。
 
けれども、私は天皇陛下御自身が祈って頂いているお陰ではないかと、本当に実感するのです。私達真言宗の僧侶は日本全国に一万人以上います。天皇陛下ご自身の祈りを助ける様な意味合いで、先のように祈り続けて来ました。
 
天台宗も殆ど同じ様な考え方で、比叡山の根本中堂で四月四日からの一週間、天皇陛下の御衣を奉安して「御修法大法」が修されています。そうすると二万人から三万人の僧侶が祈り唱え続けている事になります。
 
そして信者さん達も、蓮華院でいつもお伝えしてきた様に、自分のための祈りばかりではなく、周りの人にも目を向けて、他の方々の幸せのためにも祈って下さっています。
日本人の中の、佛教徒の多くの方々には、日本の国家が安泰であり、国民が病気をしない様にという願いを持っている人がたくさん居られて、その祈りを実践して頂いているわけです。
 
実在する祈りの力、信仰の力
 
「こんな祈りは何にもならない!!」と言う、信仰のない人、無神論者もいますけれども、何にもならないのであったら、今頃、蓮華院そのものが存在していないはずです。佛教もとっくに亡びているはずです。神社も然りです。しかし蓮華院も佛教も、神社も厳然として在り続けています。
 
真剣に祈るその思いというのは、祈りの力、その数、その時の社会情勢など様々な状況が重なり合いますけれども、必ず効果がある。祈りの力は必ず跳ね返って行って、色んな光を発していくという事を確信しています。ここにいつもお参りされている皆さん方も、そう思っておられなければ、ここに足を運ばれることはなかったはずです。
 
そういった意味で祈る事。そして祈りの力を信じて祈る事。その事がいかに大切かという事を、今回のコロナ禍の一件で改めてしみじみ実感している所です。
 
どうか皆さんも、日々の祈りの中で何を祈り何を願い、どの様な生活をするか。何のための祈りをするのか。それを考えながら日々祈り、生活の中でその祈りの力を実践して行く事が、とても大事なのではないかと思っております。合掌(つづく)




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