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2021年07月09日大日乃光第2310号
日本古来の和の精神で周りに和顔愛語を広げよう

日本古来の和の精神で周りに和顔愛語を広げよう
 
一万年以上争いの無かった縄文時代
 
世界で最も古い歴史を持つ縄文時代が脚光を浴びています。これは全国で九万ヶ所以上もの遺跡が発掘された成果です。
 
それと共に、日本人がいつ頃からこの列島に定着し、独自の文明を作って来たのか。そういう事も今盛んに研究されています。
 
また、最近では日本人の源流が遺伝子解析によっても明らかになってきています。それによれば、日本人の源流には南方から来た人達と、大陸から渡ってきた人達の両方があるようです。
 
漆器の事を海外では「ジャパン」と呼びますが、漆(うるし)が使われていた形跡が約一万二千六百年前の縄文時代初期に遡る事が分かっています。従来は漆文化は中国が発祥で、その技術が漆木と共に大陸から伝わったと考えられて来ましたが、真実は逆で、日本人が先に漆を栽培し、実際に使いながら生活していたのです。木製品や土器の表面を、世界一強固な漆で保護するという非常に高度な文明を、日本人は一万年以上前から生み出していたのです。
 
また縄文時代は凡そ一万二千年も続きましたが、発掘調査の結果、争いや互いに殺し合った痕跡が見られないという特徴があります。佛教伝来からは凡そ千四百年程経ちましたが、それ以前から日本人には既にお互いに助け合い、慈しみ合う、そういう和の精神が脈々とあったという事です。
 
平安時代は三人に一人が外国人?
 
少し飛躍して、皇円大菩薩様が御在世中の平安時代はどういう時代だったでしょうか。平安初期に嵯峨天皇が編纂を命じられた『新撰姓氏録』という、様々な人々の血統を調べた書物があります。
 
それによれば、祖先が皇室に直接繋がっている清原氏や橘氏などを「皇別」と称し、当時二百万とか三百万と推定される総人口の内、何と三分の一も居られたという事です。
 
それから神武天皇より更に遡り、天孫降臨の神代に皇室から別れた神々(天神)の子孫、或いは天孫降臨以前からの土着の神々(地祇)の子孫とされる人々を合わせて「神別」と称し、藤原氏や大伴氏など、皇室を外から支えてきた人々が三分の一居られました。
 
残りの三分の一は「諸蕃」と類別され、当時、外国から移り住んだ人々の事です。つまり皇円大菩薩様の時代には、外国人が人口の三分の一も居たという事になります。
 
渡来系の中で特に有名な一族が秦氏です。秦氏は八幡神社や稲荷神社を創祀し、氏寺として京都太秦に広隆寺を創建しました。その広隆寺の御本尊が国宝第一号として有名な弥勒菩薩半跏思惟像です。
 
さらに遡り、奈良時代に東大寺の大佛様の開眼供養で大佛様の眼に魂を入れ、佛像そのものに入魂された導師は、何と菩提僊那(ボダイセンナ)というインド出身の僧侶です。他にもカンボジアやベトナムからも多数の僧侶が列席されて、国際色豊かな中で盛大に執り行われました。
 
この様に奈良時代から平安時代にかけての頃は、何と三人に一人が外国人でした。ですから日本は多民族国家として、外国人を仲良く受け入れて融和する、早くからそういう素地を持った国であったという事です。
 
「帰化」とはその国を愛すること
 
当時、外国から渡来した人々は日本に馴染もうと努力し、帰化人(渡来人)となって日本の社会に溶け込みながら、様々な技術や文化を伝えてくれました。帰化とは「その国の(君主の)徳治を慕い、その国に自ら身を投じ、進んで教化・感化されつつその国に服従し、その国の発展に寄与すること」が本来の意味です。
 
もちろん、混乱も少なからずあったようで、果断に取り締まった時期もあり、そういった段階を経て和を乱す反抗的な人々は立ち去り、帰化した人達も次第に同じ日本人として和合し、交わって日本を形成して行きました。このような歴史が少なくとも千二百年続いているわけです。
 
争いを避け国を纏めてきた婚姻政策
 
ここで日本人を一つにまとめてきた大きな原理があります。それはまさに天皇陛下です。
皇室の御存在は、今日まで続く世界最古の王朝であり、従って日本が世界で一番古い国である証拠でもあります。
 
二千年を超える歴史を連綿と紡いできた皇室は、どのようにして日本全国を統治して来たのでしょうか?最初の頃こそ少し戦いがあります。『古事記』には神武天皇の東征で、様々な先住民の抵抗があった事が記してあります。
 
それ以降は、どのようにして日本全土に皇室の威光を広めていったのでしょうか?答えは婚姻によって、各地の有力氏族と姻戚関係を結ぶ事でした。これによって血を流さずに融和していく。この政策で皇室を中心に国を統治し、日本が纏まっていったのです。その流れで二千六百年、連綿と続いているという事です。
 
この事は、私達一人一人が本来誇りに思うべき事です。しかし今、このような歴史を学校ではほとんど教えていません。その結果、「自己肯定感」を持てない若い人々が、世界でも最低レベルになっています。
 
自己肯定感と言えば、例えば出雲大社の大国主神の「国譲り」説話があります。自分が苦労して創った国を「どうぞあなたの国にして下さい」と、こんな話が神話に残るという事自体、世界では稀なのです。
 
日本は縄文時代から和を中心とした国であり、天皇陛下を中心に、婚姻を通じて様々な人達と融和を図って来たのです。
 
歴代の皇室を支えてきた佛教
 
ここに更に佛教の和の精神が重なります。平安時代に先程の嵯峨天皇が弘法大師と巡り遇われました。嵯峨天皇と弘法大師は、橘逸勢と共に「三筆」と讃えられる能筆家です。
 
嵯峨天皇は弘法大師と非常に深い信頼関係がありました。当時、今のコロナ禍の様に疫病が流行り、嵯峨天皇は自らの徳が至らない為と懺悔されて、身を正して丁寧に『般若心経』を写経されました。その現物は、京都の大覚寺の心経殿に納められています。
 
弘法大師は『般若心経秘鍵』という『般若心経』の解説書を書かれています。その上表文に、「時に弘仁九年春、天下大疫す。ここに(嵯峨)帝皇自ら黄金を筆端に染め、紺紙を爪掌に擡(もた)げ、般若心経一巻を書写し奉りたまふ」とあります。日本国中に疫病が広まった。時に嵯峨天皇は自ら筆を取り、紺紙に金泥を以て写経を浄書されたと。するとこの写経が終るか終わらないかの内に、病が癒えて蘇生した人々が道々(街)に溢れたという事です。
 
このように奈良時代からずっと影となり日向となり皇室を支え導いてきたのは、実は佛教の僧侶でした。さらに歴代天皇の中には、何と三十五人もの御方が上皇に退位された後、出家して法皇となられました。
 
今年二月十九日に御誕生日を前に、今上陛下は歴代の天皇陛下が疫病退散のために『般若心経』を写経して祈願された事蹟を辿り、「過去の天皇陛下のなさりようをしっかり継承して行く」と力強く仰られましたので、或いは写経をされているかもしれません。
 
神佛習合の「本地垂迹」説
 
開山上人様は、皇円大菩薩様八百年大遠忌を機に奥之院開創を発願されました。当初は奥之院の事を「大日山天龍寺」と名付けられましたが、奥之院だけをお参りした人には本院との繋がりが分からなくなるとの危惧から、当面の間、蓮華院誕生寺の奥之院と称する事になりました。ですから奥之院の伽藍の瓦には既に天龍寺と刻してあります。
 
この「大日山」の山号の由来は何でしょう。これは開山上人様から直接聞いた話です。
「日本という国は大日如来の御徳が光輝く国である。言ってみれば、世界の中で大日如来がおわします国である。その証拠に、日本で一番尊い神様である天照大御神は、佛教では大日如来に当る」と、ここから奥之院を大日山と名付けられたのです。
 
これは日本で発明された「本地垂迹説」という考え方に則っています。「本地」は大日如来だけれども、日本では「天照大御神」というのだと。この様に日本の神々を、佛教の曼荼羅の諸佛、諸菩薩に当てはめたのです。この世界的な発明のおかげで、その後神道と佛教はさながら夫婦の様に睦み合い、両手の掌のようになってこの国の人々を支えて来たのです。
 
それが深化して日本古来の山岳信仰にも結びつき、今でも小岱山の観音岳や、有明海対岸の雲仙普賢岳など、山や峰々の名前として残されたのです。
 
奈良時代の聖武天皇は疫病退散のために大佛造立を発願されました。その聖武天皇は自らを「三法の奴」(弟子)と称されるほど佛教に帰依されました。
 
それ以来、歴代の天皇陛下は佛教の精神も大事にされて、直系のご先祖様を祀り、合わせて国中の神々は勿論の事、実は本地である諸佛諸菩薩をも合わせて祀られているのです。
 
疫病退散後の明るい未来に向けて
 
先程御遠忌法要を修しましたが、信者の皆さんは、皇円大菩薩様の御恩を肌身に感じておられる方ばかりだと思います。
 
人から何かを頂いたり親切にされたら、普通ならお返ししようとします。しかしお返しする事が叶わない事もあります。
 
そういう時には自分の身の周りの人達に、自分が受けた恩を少しでも分け与えるようにお返ししようと努めるのが、信仰ある者として本来あるべき姿ではないかと思います。
 
私達は今、このコロナ禍の中で大変困難な状況になっていますが、それももうそろそろ終わりを迎える事でしょう。
 
来たる東京オリンピックも恙なく開催されて、国内外の人々の活躍を目にする事でしょう。その様な明るく心沸き立つような世界が、もう目の前に迫っています。
 
これからも日本は、未来に向けて、世界に対して様々な貢献を続けて行く事でしょう。
 
どうか私達も、今はマスクをしていても、その下の表情には笑顔を、そして周囲の人達に少しでも温かい眼差しと心で接する、そういうお気持ちでこれからまた一年間、精進を続けて頂ければ有難いと思います。合掌




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