ホーム > 大日乃光 > 大日乃光一覧

大日乃光






大日乃光

2022年02月14日大日乃光第2329号
受験勉強も人生の修行と思い、御宝号念誦で心願成就しよう

コロナ禍の中の受験生活を労る
 
立春を過ぎ、こちら九州では毎日散歩する中でも少しずつ、春の萌しを感じるようになって来ました。
 
本誌が皆さんのお手元に届く頃、皆さん方の大切なお子さんやお孫さんにとっては、人生最初の試練とも言える受験シーズンが佳境を迎えている事と思います。国公立大学の一般選抜では先月中旬に共通テストが終わり、これから前中後三期日程に分かれて試験を受け、合格発表を待ちます。また私立大学でも今まさに前後期に分かれて入試が行われています。
 
今年は非情にもまさにこの大切な時期にオミクロン株の大流行が重なってしまい、感染者と濃厚接触の可能性のある受験生について、最終的には別室での受験を認める判断に落ち着きましたが、受験生とそのご家族、先生方はじめ関係者の皆さん方のご心労は如何ばかりかと案じております。
 
この時期は日々の祈祷の中で、祈願を申し込まれた方には申すまでもなく、縁あって思いつく限りの方々に対しても学業成就、受験合格を念じ続けております。
 
高野山で過ごした学生生活の思い出
 
この時期になると、私がかつて五年間過ごした高野山での一年間の修行道場と、四年間の学生生活を思い起します。それは今にして思えば、私にとって大切な、人生の大転換期だったからです。
 
すでに五十年も前の事ですが、いくつかの事柄を昨日の出来事のようにありありと思い出します。その五年間で、これまでの七十年の人生の中の数ある感動の中でも特別大きく人生を変えるほどの、魂を揺り動かされた感動を二回経験しました。(二回目の経験は、次回お伝えします)
 
運命を導く大いなる御意志
 
その一回目は、高野山専修学院時代、つまり私が十九歳の時の、二月十三日の早暁の出来事でした。
 
少し話を遡りますが、その約一年前の二月から三月にかけて、私は大学受験に失敗していました。受験浪人の生活に入る前に気分転換を兼ねて、春休みを利用して、それまで趣味の一つであったサイクリングに出かけました。
 
当時家族で住んでいた佐賀の東妙寺から、姉と弟と三人で福岡県の日向神渓谷を経て蓮華院に行く事にしました。長い上り坂をペダルを漕ぎ、目的地の日向神渓谷に着くと、一休みして再び同じ道を下り始めました。するとポツポツと雨が降り出したのです。東妙寺にそのまま帰るか、蓮華院に行くかという分岐点にさしかかった時、姉と弟は「ここからなら東妙寺が近いから、今日は帰ろう!」と言い出しました。
 
これと言って蓮華院に行かなければならない特別な理由があった訳ではありませんが、私は〝何としても蓮華院に行かなければならない〟と、何者かに衝き動かされるように二人の反対を押し切って自転車を南に向け、蓮華院を目指しました。あまりに強い私の意志に、姉と弟も一緒に付いて来ました。
 
途中から更に雨脚が激しくなり、雷が鳴り始め、何度も近くに落雷しました。そんな豪雨と稲光の中、全身ずぶ濡れになりながら必死の思いでペダルを踏み続け、雷に打たれて死ぬのではないかと、死の恐怖さえ感じながら蓮華院に到着しました。
 
すると、開山上人様(是信大僧正様)から「すぐ部屋に来い!!」と呼び出されました。
私は体の水気を拭きながら、中興開山堂の居間に入りました。
 
御霊告に従って高野山に入山
 
開山上人様は開口一番、「今からすぐに気車で東妙寺に帰り、真如と一緒に高野山に行け!!」と言われたのです。高野山がどこにあるのか、どんな所なのかもほとんど知らなかった私でしたが、「ハイ!分かりました」と言っていました。当時の開山上人様は、私達孫にとっては絶対に逆らえない大きな山のような方でしたから「ハイ」以外には言えなかったのです。
その翌日には父(真如大僧正様)に伴われて、生まれて初めて高野山に身を置きました。
 
東妙寺の先代住職、故岩根真寛大僧正様の弟弟子で、当時高野山大学の学長であられた中野義照先生を始め、父の同級生にして高野山大学教授の高田仁覚先生他、父の同級生の方々にもお会いしました。そして父は私を大学に入学させる前に、まず高野山の専門修行道場である専修学院に入学させる事を決められたのでした。
 
初めて向き合った僧侶への道
 
高野山が初めてならば、修行道場で何をするのか、どんな生活になるのかも全く解らなかったのですが、父に伴われて初めて向かった専修学院から、あまりにも清々しく颯爽とした、自分とあまり年齢の違わない若い修行僧が行脚(あんぎゃ)に出立される所に遭遇しました。
 
その清浄で晴れやかな表情と、鏡のように拭き清められた広く長い廊下の佇まいに感動した事もあって、「一度、坊さんの世界にしっかり向き合うのも悪くないか!」という思いが芽生えたのでした。
 
十一歳まで蓮華院で生まれ育ち、東妙寺で青少年時代を過ごした私は、父や祖父を見ていて「とても私には坊さんは務まらない。幸い弟が坊さんになると言っているので、自分は別の生き方をしよう」と、勝手に思っていたのです。父は二人兄弟の弟でしたが、父の方が僧侶となり、長男の弘海伯父が別の世界に身を置いた事も大きかったと思います。
 
しかしよくよく考えてみれば、私は祖父と父以外の坊さんの生き方を全く知らなかったし、僧侶の役割が何なのかもほとんど解っていなかったのです。その上、自分は佛様へのお供えの佛飯を頂いてここまで育って来たにも関わらず、お寺の事、僧侶の事をあまり知らず、佛教がどんな教えなのかもほとんど知らなかったのです。
 
そこで一年間、専修学院での修行に励み、その結果、やはり僧侶の世界は自分には無理だと思ったら、その時初めて自分の道を歩こうと決めていたのです。こうしてその年の四月には一人の修行者になっていました。
 
専修学院で学んだ深甚なる佛教の思想
 
高野山に登ってから、床屋さんで頭を丸めて頂き、専修学院の門をくぐった時は、身の引き締まる思いでした。四月とは言え、お堂の北側にはまだ屋根から落ちた残雪がうず高く積もり、夜は刈ったばかりの頭に頬かむりをしなければ寒くて眠れないほどでした。こうして一年間の佛法・佛道との対決が始まりました。
 
この一年が人生の分岐点と思っていたので、私は他の仲間の修行者が九時に消灯(これは道場の定めです)した後も、蛍光スタンドに衣を被せて光が漏れないように注意しながら佛教書を読み耽り、他の人が休んでいるときにも、誰も掃除しない廊下を拭いたりしていました。時には指導者に様々な相談や質問をしたりして、一学期の四ヶ月を過ごしました。
 
(この時の指導者との対話の中で「内観」の事を知ったのが、後に当山で「内観」を始めるきっかけとなりました)
 
この期間は修行の実践よりも佛教学、密教学などを広く浅く学んだ時期でした。その間に佛教を知れば知るほど、学べば学ぶほど、その広く深い思想大系に圧倒され、知的好奇心で大いに心が満たされ、「佛教とはすごいものだ!!」と感動していました。
 
僧侶の道への扉が開いた神秘的な体験
 
そしていよいよ九月から四ヶ月間の専門的な修行に入りました。自分なりに必死に修行したつもりでした。しかし行の最後に密教の大切な儀式である「伝法灌頂」が終わっても、まだ僧侶として生きる決心がついていませんでした。
 
一月に入っても、皆が消灯した後で一人本堂で読経をしたり、瞑想に励んでいました。
そんな中で、二月十三日にはとうとう朝まで本堂に坐っていました。日課の、朝の勤行の合図の半鐘の音で瞑想から出て、皆さんと一緒に再び本堂に入り、一時間のお勤めが終わりました。
 
そして皆さんと一緒に本堂の正面から出ようとしたその時、朝日を全身に受けた瞬間に、思いもしなかった事が起きました。全身を貫く閃光と言うか、波動と言うべきか、感動が足の底から全身を包んだかと思うと熱い涙が止め処なく溢れ出し、衣の胸元を濡らし、白い水蒸気になって立ち上りました。
 
と、その時、「アー!自分もお坊さんになって良いのだ!僧侶にならせてもらえるんだ!!」
と心の中で叫んでいました。
 
その年の四月、現役の同級生から一年遅れて高野山大学に入学したのでした。
 
証明された『求聞持行』の功徳力
 
今思えば受験勉強も一種の修行のようなものです。好きな趣味の時間を削り、睡眠時間を削り、学び憶えるべき事を必死で学び、記憶するといったストイックな日々を、孤独と闘いながらひたすら実行するのですから、ある部分で修行と似ています。
 
蓮華院ではかつて受験に失敗した一人の青年を預かり、寺での生活の合間に『皇円大菩薩求聞持法』を授けて実修させた事がありました。これは皇円大菩薩様の御宝号を、五十日間かけて百万遍唱えるという修行です。
 
その後、彼は希望する大学に合格し、皇円大菩薩様の勧学の精神を汲んで平成二十六年に拡充した「真如基金奨学生」の第一号として勉学に励み、大学院に進んで博士論文を執筆し、見事に文学博士の学位を取得して学業を成就しました。
 
蓮華院誕生寺の教学部として、本誌にも度々執筆している準教師の藤井英仁君の事です。
彼の元々の学力は分かりませんが、受験合格や大学での優秀な成績のきっかけは、『求聞持行』の功徳であり、それは学会で注目される論文執筆の根底に、今もあり続けていると確信しています。
 
『求聞持行』は弘法大師も修された記憶力を増進する真言密教の秘法です。受験生や来年受験する皆さんも、勉強の合間に十五分、三十分と時間をとって、御宝号を千遍、二千遍、三千遍とひたすら唱えるだけでも必ず功徳がありますので、ぜひ実修してみて下さい。 (続く)




お申し込みはこちら 大日新聞(月3回発行)を購読されたい方は、
右の「お申し込みはこちら」からお申し込みいただくか、
郵送料(年1,500円)を添えて下記宛お申し込みください。
お問い合わせ 〒865-8533 熊本県玉名市築地玉名局私書箱第5号蓮華院誕生寺
TEL:0968-72-3300