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2022年03月29日大日乃光第2334号
新年度を迎えるに当たり、子供達の学習意欲を高めよう

新年度を迎えるに当たり、子供達の学習意欲を高めよう

「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通りに、こちら熊本では急激に、昼間の気温が上がるようになりました。
 
そんな中、今日は十一年前の三月十一日の東日本大震災犠牲者の追善供養と行方不明者の一日も早い帰還を祈念し、合わせて連日報道されるウクライナ情勢の、一刻も早い戦争終結と犠牲者追悼を、信者の皆さん方一人びとりの心願成就と共に、真剣に祈りを込めました。
 
ウクライナもロシアも佛教国ではありませんが、全ての発端は貪りと怒りと無智の、佛教で言う「貪・瞋・痴」の三毒から始まっているように思われてなりません。
 
既にアルティック(ARTIC/認定NPO法人れんげ国際ボランティア会)では人道支援の募金を始めています。私達は出来る事に努めながら、心は常に弱い人々の立場に寄り添い、その痛みに共感しながら事態の終息を念じ続けて行きたいと思います。
 
子供の一生に大切な言葉
 
さて、本誌が皆さん方のお手元に届く頃にはいよいよ四月となり、子供たちにとっては新入学・新学年の時期を迎えています。また新社会人にとっても、職業人としての新たな人生のスタートを切っておられる事でしょう。
 
コロナ禍の中ではもう三回目になりますが、日本各地でこの時期を寿ぐように、桜の花が変わりなく満開を迎えている事でしょう。
 
この時期になると新入学の一年生を持つご家族の方に、毎年必ず伝えている事があります。それは進学先の学校や、そこで出会う先生方について、子供たちにぜひ伝えて頂きたい事です。
 
「あなたがこれから学んでいく小学校は輝かしい伝統を持つ学校で、素晴らしい先生方がたくさんおられます。担任の〇〇先生は素晴らしい先生です。あなたは運が良くて良かったね!」と。子供たちにこのように、元気づけるように語りかけて頂きたいのです。
 
子供の学習意欲は傷つきやすい
 
私の父、先代真如大僧正様は佐賀の東妙寺におられた頃、子供会や少年研修館、また小中学校のPTA会長などを務められ、子供達の教育に大変熱心でした。その経験から、新入学の保護者の皆さん方に、先のように、学校や先生方を大いに褒めて欲しいと常々仰っておられました。それは、「教育の効果は、子供達が先生を尊敬する所から始まる」という信念に基づくものでした。
 
ともすれば、近年は先生より保護者の方の学歴が上であったり、人生経験が豊富であったりします。他にもマスコミによる不祥事の報道もあって、保護者自身が先生方を必ずしも尊敬しなくなっているのも事実です。
 
しかし仮に、子供達の前で学校や先生方に批判的であったり、「あ~○○先生が担任なの。それは不運だね」などと言ってしまえば、子供達は途端にやる気をなくし、学習意欲も消え失せてしまうでしょう。
 
ずいぶん昔の事ですが、父が旧制中学校に入学した時、二つ年上の伯父から「英語の先生は誰?」と聞かれて「○○先生」と答えると、「お前は運が悪いな!あの先生はつまらんぞ!!」と言われ、そのお陰で遂に英語が好きになれず、成績もあまりふるわなくなったそうです。
 
先生方の気持ちを代弁しよう
 
この話を先代から聞いていたので、私自身が母校のPTA会長を務めた時には、入学式で保護者の方に次のような事を伝えました。
 
「子供達には、担任の先生の悪口を決して言わないで下さい。逆にその先生を全く知らなくても『○○先生が担任なの!それは良かった。あの先生は良い先生だよ。あなたは運が良いね』と伝えて下さい。もし万一、何か不都合な事があれば、その不満を担任の先生に直接向けるのではなく、まして子供に言うのでもなく、私達PTAの役員や教頭先生、校長先生に伝えて下さい。その事がひいてはあなた方の子供達のためにもなります。この事をぜひお約束下さい」
 
すると式の後、校長先生がわざわざ、「先程は私達が言えない事を、よくぞ仰って下さいました。本当に有難うございました」と、しみじみとお礼を伝えに来られました。
 
プラス志向が「功徳」に繋がる
 
また、これから新社会人として会社等に勤める人は、その勤め先から多くの事をして貰おうと思わずに、逆に自分が勤め先にどんな貢献が出来るのかと真剣に考えてみて下さい。
よしんば自分の働きが給料に見合っていない、自分は給料以上に働いていると思われるなら、それは未来のために良い功徳(陰徳)を積ませて頂いていると考えて下さい。その見えない所に積み上げた功徳は必ずや、将来あなた自身に還って来て、あなたを助けるに違いありません。
 
良き信仰生活を送る秘訣とは
 
信仰においても、この新入学の子供達と先生方の関係、また新社会人と勤め先の関係等と似たような関係があると言えます。それは、皆さん方のお一人お一人が、御本尊皇円大菩薩様とどの様な関係を結ぶ事が出来るかに掛かっています。
 
御本尊皇円大菩薩様への全幅の信頼と信仰を心にしっかりと持ち続けることで、その方の生活と人生が変わって来るのです。
 
先代はよく、「皇円大菩薩様と恋愛するような気持ちで接しなさい」と話しておられました。
 
私自身、これまでの様々な修行の時、一歩一歩歩く時も一呼吸一呼吸の中でも、常に御宝号を唱え、皇円大菩薩様に心を向け続けながら、修行の時間も日常の様々な時も、四六時中皇円大菩薩様を思い、皇円大菩薩様の霊波を感じるよう努めて来ました。
 
そんな中で、時に皇円大菩薩様の気配や温もりさえ感じるような事がありました。そのような時は何とも言えぬ安らぎを感じ、大いなるエネルギーを頂いている事を実感しました。
皆さん方も少しでも多く、皇円大菩薩様の御宝号を唱えて下さい。必ずや偉大なお恵みを実感する事が出来るはずであります。
 
それと同じような気持ちで子供が親を大切に思い、夫婦が互いに労り合い慈しみ合い、生徒が先生を尊敬し、新入社員が上司を尊重して行けば、全てにおいて円満な生活が約束される事でしょう。子供達の学習の成果が上がり、仕事の成果が上がり、満ち足りた豊かな家庭生活が実現するに違いありません。
 
次世代に対し、範たるべし!
 
一方で、私達が子供や孫達から尊敬に値する人格であるよう努めなければなりません。
子や孫達の前ではいくつかの生活上の原理原則を、率先して示し続ける事が大切です。
 
具体的には、私の場合は孫達とその日初めて会う時は、必ず丁寧に挨拶する事を心掛けています。孫達も今では丁寧にお辞儀をして挨拶を返してくれます。
そして別れる時には「さようなら」「お元気で」と、必ずこちらから別れの挨拶をするようにしています。
 
近年は、親子の間や孫と祖父母の関係が友達同士のようである事が、理想であるかのように広まっているようです。それも大事かもしれませんが、それだけではなく、人生の良き先達として、子供や孫達に時には厳しく指針や規範を示す事がさらに大切です。
 
私の場合は父方と母方の二人の祖父を、とても尊敬していました。父方の祖父、つまり開山上人様(是信大僧正様)は、もの心ついた頃には岩のように大きく、とても厳しい方といった印象を強く受けて来ました。
 
この事からおじい様(開山上人様)の仰る事には「絶対に逆らえない」という、厳然たるものを感じて来ました。この絶対的な祖父に導かれて、私は僧侶の世界に入って行く事が出来たのでした。
 
そこまで厳格でなくても、子や孫達から敬意を受けるような生き方を、私達は後ろ姿で示すべきだと常々思っています。また職場でも、後輩達に何らかの示唆を与えられるような先輩でありたいものです。
 
人は子や孫、後輩や生徒から尊敬される人物であるように努力する事が、自分自身を向上させる大きな契機にもなるのです。
 
大乗佛教に「上求菩提 下化衆生」という言葉があります。この言葉は自分自身が悟りを求めて努力する一方で、苦しんでいる人を救済して行くという、菩薩の基本的な生きる姿勢を表しています。
 
新年度に当たり、新入学の子供達や新社会人を受け容れる側も、相手から「尊敬されるだけの人間たるべし」という心構えをしっかりと持ち続けて行きたいものです。
 
若者の人生に大切なこの時期が、清新で豊かな良きご縁結びとなり、充実した日々を送られますように、心より念じております。 合掌




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