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大日乃光






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2023年08月28日大日乃光第2379号
「子どもは親の姿を映す鏡」新たな命の誕生に襟を正す

「子どもは親の姿を映す鏡」新たな命の誕生に襟を正す
     
今年も暑い夏が続いております。
七月の東京都心の猛暑日が、過去最多を更新したそうです。梅雨明けからの急激な気温の変化について行けず、体調が整わない方も多くいらっしゃるようです。暦の上では秋を迎えておりますが、信者の皆様お体には十分お気を付け下さい。
 
第一子誕生のご報告
 
さて、昨年八月の『大日乃光』を執筆した際にご報告致しましたが、その時は妻慶子が妊娠し、出産へ向けての最終段階に入る時期でした。それから二ヶ月後の令和四年十月十一日、無事に我が子の産声を聞く事が出来ました。
 
名前は私達夫婦で候補を三つに絞り、貫主大僧正様にお尋ねさせて頂きました。貫主大僧正様もいくつか考えておられたそうですが、私達の第一候補が大吉で、とても良い名前だから「悠誠」にしなさいと仰って下さいました。ゆったりとした大きな真心を持った人になって欲しいとの思いで、悠誠と名付けました。
 
宮崎県に里帰り出産
 
昨年の二月に妻の妊娠が分かってから、地元の産婦人科にかかっておりましたが、懸念材料があったため、出産は帝王切開の線で話が進んでおりました。帝王切開になると輸血等の準備が必要になる可能性もあるという事で、総合病院での出産を勧められました。
 
妻は宮崎県出身で、ご両親も宮崎に住んでおられます。私は日中は奥之院に勤めておりますし、初産ですから少しでも安心出来るようにと、里帰り出産に決まりました。大事をとって二ヶ月ほど前から里帰りする事になりましたが、どの先生、助産師さん達も、妻のお腹の中の状況をみて、帝王切開になるだろうとの判断でした。
 
しかし、里帰り先の主治医の先生唯お一人だけは、「普通分娩でいけるかもしれないから、赤ちゃんを信じて待ちましょう」との事でした。昔に比べると、現代医療では帝王切開でも大きなリスクは無いのかもしれませんが、産後の回復なども考えると、普通分娩で生まれて来てくれる事を祈っておりました。
 
赤ちゃんを信じられた主治医
 
九月二十八日の夜中、妻は突如激しいお腹の痛みに見舞われ、緊急入院する事になりました。
予定日は十月二十日で、三週間ほど早かったのですが、当直の先生によれば朝には主治医、麻酔科医の先生が来院されるので、それから帝王切開により赤ちゃんを取り出しましょうとの事でした。
 
様々な検査を一通り済ませ、同意書にもサインをして、いよいよ手術を待つばかりとなりました。ところが主治医の先生が到着されて妻を診断された上で、「もう少し赤ちゃんを信じて待ちましょう」と言われたそうです。今生まれてしまうと早産になってしまい、赤ちゃんの健康状態にも不安が残るとの事でした。
 
妊娠三十七週から四十週六日目までが「正産期」と言って、出産に適した時期になりますが、それより早いと合併症や感染症のリスクなどが上がり、多くの場合、新生児集中治療室に入らなければならないそうです。
 
それから間もなくして薬が効き、お腹の痛みが和らいで、点滴で薬を投与しながら二週間ほど待機状態となりました。その間、何度か陣痛が来たようですが、出産までは至りませんでした。
 
御祈祷を信じた満月の夜
 
十月十日の午後、妻の陣痛が再び強くなり、分娩室に移る事になりました。その頃はコロナ禍の最中でもあり、立ち合いはもちろんの事、家族であっても病院内に入る事すら許されませんでした。私の出来る事と言えば、ただ無事を祈るだけしかありませんでした。
 
貫主大僧正様に安産祈願を続けてお願いしておりましたので、その御祈祷力に、皇円大菩薩様の絶大な御霊力が加わって、何事もうまく行くと信じておりましたが、気持ちとしては居ても立ってもいられませんでした。
 
ふと外に出ると、その日は綺麗な満月でした。昔から満月の日には産婆さんが忙しくなると言われて来たそうです。満月の日は太陽、地球、月が一直線上に並ぶ事により、様々な影響を与えます。海では太陽と月の引力を両方から受けて大潮になります。
 
科学的にはっきり立証されているわけではありませんが、赤ちゃんを守る羊水と海水の成分が似ているそうで、妊婦さんも月の引力から影響を受けているそうです。私もその綺麗なお月様を見て、今回の陣痛で無事に生まれてきてくれるだろうと感じました。
 
忘れもしない吾子の第一声
 
それから病院に行っても会う事は出来ないと分かっておりましたが、少しでも近くから見守ってあげたいと、宮崎まで車を走らせました。病院の駐車場に着き、待っていると、お昼前に妻から電話が掛かってきました。
 
無事に普通分娩で男の子が生まれたと。その声の向こう側で「アギャー!!アギャー!!」と、赤ちゃんの泣き声が聞こえました。人生は「ア」から始まり「ウーン」で終わるとも言いますが、まさに吾子のこの世での人生が始まったんだと感じました。今でもその情景は心の奥底に残っております。
 
妻は大変な疲労感の中にも達成感や充実感の入り混じった声でした。その電話は一生忘れられないと思います。まさに命をかけた出産でした。出産後、母子ともに検診を受け、異常が無い事を確認してから、初めて二人きりになれたそうです。その日は天気も良くて、カーテンの隙間から木漏れ日が差すように温かい光に包まれ、幸せな気持ちに満たされ、自然と涙が溢れて来たと聞きました。
 
改めて振り返ると、巡り遇いの不思議を感じざるを得ません。主治医が違う先生だったら、早々に帝王切開になり、早産で生まれる事になっていたでしょう。妻には大変な経験だったと思いますが、全てが良い方向に進みました。これも皇円大菩薩様のお計らいのお陰と思っております。
 
往昔のご先祖様に思いを馳せる
 
このように命の誕生を間近に経験すると、命の尊さを体感致します。私自身は遅産で、体重が四千二百三十グラムまでなり、母が大変苦労したそうです。それぞれの家庭でいくつもの苦難を乗り越えて、一つの命が誕生します。
 
今の時代でもこれほど大変な苦労があるのに、昔はどうだったんだろうと想像してみて下さい。大きな災害等、何度も起きました。戦争もありました。どんなに辛い状況であっても、それぞれの時代でご先祖様方が次の世代に命を繋いで下さったからこそ、今の私達があるわけです。
 
その命を繋いでくれた人達こそ、私達のご先祖様なのです。そのように考えると、ご先祖様に感謝し、供養する事が全ての元となっている事が分かります。
 
お寺やお佛壇で合掌しお経を唱えたり、お供え物をする事だけが、先祖供養に繋がる訳ではありません。視点を変えて、自分があの世からこの世を見渡せると仮定してみて下さい。
自分の家族、子や孫達が幸せに暮らす姿に喜びを感じるのではないでしょうか。ご先祖様に喜んで頂けるように生きる事も先祖供養に繋がるのだと思います。
 
蓮華院の信仰を受け継ぐ決意
 
また、自分が上の世代から受け継いだものを、しっかりと次の世代に伝えて行かなければなりません。
 
蓮華院では佛教の難しい教理、教学よりも、生活の中に密着した教えを中心に説かれてきました。「反省に始まり、感謝を経て、奉仕に至る」との三信条や、「ちかいの詞」の意味は、信者の皆さんは何度も耳にされた事でしょう。その一つ一つの教えを実践する事こそ、幸せへの近道に違いないと思います。
 
自分の子や孫達に口で教えるだけでは伝わりません。まずは自らが実践し、その後ろ姿を見せる事によって、次の世代に繋がって行きます。私もお陰様で人の親になる事が出来ました。
 
子は親を映す鏡です。鳶が鷹を生むという諺もありますが、それは稀なケースかと思います。
自分が怠けた生活をしていると、子も怠け者になります。優しい子に育って欲しいなら、自分がまず優しい人になりましょう。子は自分を映す鏡なのですから。子どものおられない方は、身近な人に置き換えてもいいかと思います。
 
いま一つの子宝ご利益談
 
今回は私自身の体験したご利益談を掲載させて頂きました。そしてこの原稿を奥之院の本堂で執筆している間に、別の大変嬉しい出来事がありました。
 
十年以上前から月に一度ほど、奥之院に参拝されている熱心なご夫婦がおられます。そのご夫婦は護摩木で先祖供養、水子供養、子宝祈願を長年続けて来られました。その事で、一度は非常に辛い経験をなされた事が容易に想像出来ました。ですが元々口数の多いご夫婦ではありませんし、こちらからも水子さんの話には触れませんでした。
 
去年の末頃、奥様が少しふっくらしておられました。もしかしたらと思いましたが、こちらから訊ねてみる事はしませんでした。ところが護摩木を見ていると、子宝祈願から安産祈願に替わっていました。そこでやっと、「良かったですね」とお声掛け出来ました。
 
それからも奥様の体調がいい日には参拝されて、ご供養、祈願を続けておられました。私が最後にお会いしたのが三月頃だったと記憶しています。お腹が大きくなり、いよいよ出産かという時期でした。それから数ヶ月、音沙汰がありませんでした。
 
六月頃、私が所用で外に出かけている間に参拝されていました。藤井英仁さんが対応されましたが、奥様のお腹は戻っておられたけれども、赤ちゃん連れではなく、ご報告もなかったのでこちらからも聞けなかったとの事でした。奥様は高齢出産に当たりますので、大変心配しておりました。
 
すると昨日、久しぶりにお参りに来られました。赤ちゃんは連れておられません。その時は健康祈願で、本堂内陣でのお参りを希望されました。受付で用紙にお名前や生年月日を記入して頂く時、健康祈願という事で奥様の身に何かあったのかとまた心配になりました。
 
するとお名前を書かれる時、見覚えの無い名前がありました。生年月日に令和五年と書かれた瞬間、やっとお訊ねする事が出来ました。実は四月に無事男の子を出産されていて、赤ちゃんの遠出はまだ心配だからとご両親に預けてお参りに来られたそうでした。「高齢出産なので恥ずかしくて言えませんでした。お陰を頂いたのに済みません」と、笑顔で仰いました。心配だった分、私の目にも思わず涙が滲んでいました。
 
これも祈願祈祷のご利益、先祖供養の功徳によるものと、改めて有難く、我が事にも重ねて嬉しく思いました。
 
本誌は秋のお彼岸前には皆さんのお手元に届いている事でしょう。蓮華院御廟では、今年も表面の通り観月会を執り行います。是非ご先祖様の供養にお参りください。合掌




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