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2023年10月28日大日乃光第2385号
奥之院大祭の柴燈大護摩祈祷で世界平和の祈りを結集しよう

奥之院大祭の柴燈大護摩祈祷で世界平和の祈りを結集しよう
 
十月も半ばを過ぎると朝夕は冷え込み、日脚がめっきり短くなりました。奥之院では毎日、朝の六時に祈りをこめて飛龍の鐘を撞くことから一日が始まりますが、近頃はまだ薄暗く、肌寒い中でのお勤めになってまいりました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 
毎年蓮華院では、十月に入ると奥之院大祭に向けての準備で慌ただしくなってまいりますが、実は大祭の一ヶ月前にも、私達にとって大切な法要がございました。
 
総本山西大寺で光明真言土砂加持大法会に出仕
 
当山は真言律宗に属しておりますが、毎年十月三日から五日の日程で、総本山西大寺に於きまして、「光明真言土砂加持大法会」が執り行われます。
 
この光明真言会は鎌倉時代の文永元年(一二六四年)から始まり、一切の亡魂の追善菩提のために昼夜不断の総回向を三日間に渡り執り行います。この大法要は七百五十年以上、一度も途切れた事がなく、第二次世界大戦前までは、この大法要を一週間もかけて行っていたそうです。
 
「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」この光明真言をお唱えし、御本尊釈迦如来立像の前に収められた土砂を加持してまいります。
 
光明真言は、真言宗で最も大切にされてきた御真言の一つです。その功徳は一切の罪障を消滅し、真言を唱え加持した土砂をお墓にまくと、亡者は極楽にいけるといわれます。
 
法要を司る「綱維(こうい)」は、このたった二十七文字の御真言を、一回唱えるごとに約十分もかけて、ゆっくりゆっくり丁寧に一心にお唱えしながら、五体投地していきます。その姿があたかも提灯を折り畳む姿に似ているという事から「提灯たたみ」とも言われていて、無形文化財に指定されています。
 
来年は、この「綱維」を私が務めさせて頂けるという事で、今年は二日の準備から最後の片付けまで西大寺に出仕してまいりました。
 
御本尊の釈迦如来立像をはじめ、数百年もの間、この日本国とそこに住む人々を見守り続け、祈りを込められた佛様と御縁を頂けただけでも非常に有難い気持ちになりました。
 
また、先代真如大僧正様はもちろんの事、現在の蓮華院が中興される前の浄光寺蓮華院時代の歴代の僧侶の方々も、西大寺の光明真言会に出仕しておられた事を考えると、一層歴史の重みを感じております。
 
前回の『大日乃光』では、「高野の昼寝」の事が書かれていました。弘法大師空海上人様が開かれた高野山では、昼寝をするだけでも遠くから梵鐘の音やお経の声が聞こえてきます。また長い間祈りをこめられた聖域に身を置くだけでも信心や様々な智慧を得る事ができるという意味です。まさに西大寺も高野山と全く同じ事が言えるのではないでしょうか。
 
小岱山を霊山とされた月輪大師
 
さて、開山上人様はなぜ小岱山の中腹に奥之院を開創されたのでしょうか?小岱山は古来より霊山として信仰されて来ました。鎌倉時代前期に、月輪大師俊 律師様が小岱山の山頂に正法寺を開山されました。
 
「大師」と聞けば、弘法大師様を思い浮かべる人が多いかと思いますが、大師とは人々を教え導く非常に徳の高い高僧に、時の天皇陛下が直々に与えられる号(通常、諡号としてご本人が遷化された後に追贈される)の事で、過去二十五名ほどしかおられません。
 
その中のお一人が月輪大師様です。皇室の菩提寺として「御寺(みてら)」とも呼ばれる泉涌寺も、先の正法寺の後に中興(事実上、開山)されました。
 
「小岱山」という名前には、この月輪大師が南宋(中国)で佛教を学ばれている時に立ち寄られた禅の名山「泰山」に似ているから名付けられたという説や、観音信仰の聖地舟山群島の「泰山」から取られた説など、諸説ありますが、いずれにしろ月輪大師様が小岱山と名付けられた事が伝えられています。
 
山頂には観音様を祀るお堂や仁王ヶ滝(別名ぞうめきの滝)などの行場もあり、小岱山だけで八十八ヶ所霊場が作れるほど、様々な佛様が祀られています。
 
月輪大師様だけではなく、これまで数々の僧侶が修行され、祈りをささげて来られた山だからこそ、この地に奥之院を開かれたのだと思います。
 
また、当山の開山上人様も自ら開山堂にその御身と魂を留められ、衆生済度のために尽くしておられるのだと感じております。
 
栄枯転変の横綱照ノ富士関
 
本稿が皆様のお手元に届く頃は、十一月三日の「奥之院大祭」の直前かと思います。直近の十月十一日号から二十一日号にかけて、貫主大僧正様が『大日乃光』で奥之院大祭について、開創された頃の秘話として掲載されましたが、大祭自体の行事内容に変更がございましたので、ここでお伝えいたします。
 
まず残念な事に、今年も横綱奉納土俵入りが中止となりました。現在、横綱は照ノ富士関のお一人しかおられません。先場所も怪我のために休場されましたし、九州場所前でもあるため、奉納土俵入りは難しいとの事でした。
 
横綱照ノ富士関は、とても苦労を重ねられた横綱でもあります。伊勢ヶ濱部屋に入門し、史上三位の速さで大関まで昇進され、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのまま、いよいよ横綱の位に就かれるかという位置におられました。
 
しかし右膝前十字靭帯損傷と左半月板損傷という大怪我を負い、さらに糖尿病、C型肝炎などの病気にも罹り、番付も序二段まで降格されました。「番付は生き物」とも言われておりますように、予想より早く昇進される事も稀にありますが、休場を繰り返すと、横綱以外はすぐに番付が落とされます。
 
序二段と言えば、六つに分かれている番付表の階級の、下から二番目に位置します。それ以前は大勢の観客の前で相撲を取っていたのが、お客さんもまばらな早い時間に相撲を取らなければなりません。大関を経験した力士がそこまで番付を落とすと、普通は引退するものだそうです。
 
師弟の絆が繋ぎ止めた横綱照ノ富士関の出処進退
 
その頃、照ノ富士関は周りから「大関が序二段まで落ちて恥だ」とか、「早く引退した方がいいのではないか」などと言われていたそうです。そして照ノ富士関ご自身も何度も親方に引退を懇願されていたそうです。しかし親方は「相撲をやめるにしろ、続けるにしろ、怪我を治してからにしなさい」と、最後まで引退を承諾されませんでした。
 
伊勢ヶ濱親方(元横綱旭富士)ご自身が怪我と病気のため横綱在位僅か九場所にして引退されましたが、怪我が治った後、もっとやれたのではないかと後悔しておられたのだそうです。
弟子に自分と同じ思いをしてほしくないとの親方ご自身の思いから、照ノ富士関の引退を引き留められたという事です。
 
現在、世の中では師弟関係など希薄になりつつありますが、相撲や落語など、伝統文化の世界では、まだそのような関係が残っております。もちろん僧侶の世界も同じです。佛教では「写瓶」と言って、瓶の水を次の瓶に移し替えるように、師から弟子へと培った経験、教えをそのままに伝えていく事を表します。
 
これと同じような師弟関係により、照ノ富士関はどん底からの奇跡の復活劇に繋がったのだと思います。どんなに辛い状況に於いても師の教えを守り、一日一日自分の心と体に向き合い、相撲に打ち込まれた結果、横綱という地位に昇進されたのだと思います。
 
昭和五十三年の開創以来三十六回、二十一人の横綱が、奥之院で皇円大菩薩様に土俵入りを奉納されました。土俵入りの際、横綱は化粧まわしで腰を締め、綱からは御幣を下げておられます。これは神棚を腰に巻いている姿を現します。まさに現人神として扱われます。
 
一度、準備される所を拝見した事がありますが、付き人の方達は直接手で触れると失礼にあたるので、その時だけは手袋をしてまわしを締めておられました。横綱を警備して頂くお手伝いさん達にも、化粧まわしを締められた時だけは、周りの人が近寄らないように柴燈護摩道場まで警備して頂いております。
 
念願叶ったこども達の相撲大会
 
残念ながら横綱奉納土俵入りはございませんが、奉納相撲の「飛龍旗小学生相撲大会」は開催する事が決まりました。
 
それに伴い大相撲の現理事長であられる八角親方(元横綱北勝海)の特別なお計らいによって、八角部屋から北勝富士関と北の若関に、午後一時の柴燈大護摩祈祷からご参列頂く事になりました。
 
そして大梵鐘祈願の後、子供達への「大相撲かかり稽古」で直接ご指導して頂きます。現役力士との稽古は、相撲を続けている子供達にとっては貴重な経験になるはずです。熊本出身の正代関も、かつて飛龍旗相撲大会に出場されたお一人です。
 
ここ三年間はコロナ禍により、相撲大会を開く事が難しい状況にありましたが、今年の五月からコロナ感染症対策が五類に引き下げられましたので、相撲大会を始め、通常の奥之院大祭に戻しつつあります。
 
緊迫の世界情勢に一人でも多くの祈りを結集しよう
 
奥之院大祭の中心は柴燈大護摩祈祷になります。まず信者の皆さんの一願成就、諸願達成を至心にお祈りし、併せて世界平和、疫病退散、ウクライナ戦争の円満和平、イスラエル・ハマス紛争の即時停戦も祈願致します。
 
現在、世界は緊張状態にあります。つい先日から、イスラエルとハマスの間で戦闘状態になり、既に多くの犠牲者が出ています。「台湾有事」「第三次世界大戦」といった言葉も、最近よく耳にするようになりました。
 
今一度、世界平和のために何が出来るのか。一人一人の力は小さいかもしれませんが、世界の平和を祈り、行動して行く事でしか道は開けません。
 
今年の大祭ではぜひ、皆さん方ご自身の願いの成就だけでなく、自分の周りの方々や、世界中で今現在苦しんでいる人々に寄り添い、その境遇に思いを馳せて、ご一緒に熱烈な祈りを捧げて頂きたいと心より念じております。合掌




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