真言律宗　蓮華院誕生寺

2010年12月13日第499号
失業中の内観

　時勢でしょうか。失業中の方が内観に来られることも多くなりました。一週間という時間のとれるうちに、人生を考え直し、また心身をリフレッシュしようということで、来られるようです。

　私は内観というものが、何をどのようにする事なのか、始めは全く理解ができませんでした。
　でも、内観をするうちに感じたことは、何故周囲の連絡のやりとりや情報を遮断してまで内観をするのかという疑問がまず解けたことでした。
　現在の世の中、情報網が発達して便利ではありますが、便利な分、人として人間として一番大事なものが阻害されているような気がします。
　ここでいう一番大事なものとは「心」です。心を健全にするには、自分の身を静かで穏やかな環境におき、感情を無にしないと健全になれない。健全になれないと内観ができない。（少なくとも私は出来ません。）
　今回外部との情報を遮断してまで、このような内観が出来た事に感謝しています。
　初日に母に対する内容でしたが、正直私はこの年齢なのに今更 「おかあさん」のこと？と思い、体全体がかゆくなり、生理的に受け付け難いものがありました。
　しかし、私は我慢して、母についていろいろな事を思い出すよう努力しました。すると胸のあたりが、ごくわずかですが少し痛く締め付けられるような感じになるのです。
　胸が少し痛くなるので、最初はタバコを吸っていないので、その副作用かと思いました。
　でも、副作用でもなさそうだ。この感じはいったい何だろうーーー？すると次の瞬間、母に対して迷惑をかけた事心配かけた事が自分の頭の中に沢山よぎってくるのです。
　色々な事が浮かんだ時、母に対して大変申し訳ない気分になりました。
　次に父の事、嘘や盗みといった内観もしました。父の事を昔からいろいろな事を思い出した時、父の偉大さに気付いたことがひとつあります。
　自分が高校生の頃、世の中がバブル絶頂期で周囲は華やかだった。けれども、父親はいつも質素で、私の家庭も質素だった。何で俺の家だけこんなに貧しくてみすぼらしいのだろうとよく思ったものです。私は将来父のようにはなりたくない。いつもそう思っていました。
　しかし、時は流れ、バブルも崩壊し、世の中が不景気でガタガ タになった今、我が家はどうなっているかというと、バブルの時より生活が豊かになっているような気がします。私の父親はバブル崩壊を見抜いていたのかと、ふと思うことがあります。
　もちろん私や子供の養育費で大金が消えているので、バブル当時、父母や私達兄弟皆で質素な生活を余儀なくしたこともあります。しかし、借金もせずに、今結構裕福な生活をしているのは、父親の先見の明だと私はつくづく思います。
　最後に嘘や盗みについてですが、自分の人生を生まれた頃から今日まで振り返ると、自分の人生は嘘と盗みの歴史みたいなもので、一瞬胸がつまり、恥ずかしくなりました。
　嘘は嘘でも人々を幸せにする嘘は許されるというのですが、自分の人生まさに嘘八百の人生、人々を幸せにするような嘘がどれほどあったか？多分多くはないと思います。
　どうせ嘘をつくなら、苦し紛れの嘘よりも、人々を幸せにする嘘つきになりたいと、自分は思いました。

　最後になりますが、今回内観をして、今終わろうとしています。来る前に比べて、身も心も大変すっきりしています。
　現在失職中で大変な状況ですが、何故か身も心もすっきりしています。以前の私なら精神的に不安定でオロオロしているはずなのに、現在絶好調です。
　本当に自分でも恐ろしくなるぐらい、身も心もすっきりしていて、絶好調です。本当にありがとうございました。

苦がその人を
鍛えあげる
磨きあげる
本ものにする

懺悔の心が起これば、もはや罪は罪でなくなるが、懺悔の心がないならば、罪は永久に罪として、その人をとがめる。思うことと修めることがなければ、いくら耳に聞いても身につけることはできない。（大般涅槃経）