1999年6月10日第68号
幸福ニュース

ついに阪神タイガースが首位におどりでました(6月16日現在)。去年までは、阪神といえば最下位と相場が決まっていたのですが、今年は監督が変わっただけで、トップになるとは、あまりにもできすぎのような気がします。でも現実は何よりも雄弁です。

また、最年長で名人位を獲得された米長棋士。厳しい勝負の世界で、どうすれば一流というレベルに到達できるのか、その秘訣をのぞいてみたいと思いませんか。

今回は、阪神タイガースの野村克也監督と将棋の永世棋聖 米長邦雄先生との対談集{一流になる人 二流でおわる人}(致知出版社)をもとにお送りします。

どんなに努力してもうまくいかない人、壁にぶつかっている人、悩んでいる人、さらに向上しようという人へ、幸福へのヒントが一杯つまっている本です。

一流になる人 二流でおわる人

1.キャッチャーはプロセス主義者である。結果よりも過程を大事に考えると、可能性に賭けることができる。{理}を重んじ、やるべきことをやる。人事を尽くす。人事を尽くして天命を待つ。(野村監督、以下Nと略す)

2.覚悟に勝る決断なし。転機を乗り越えさせたものは、すべて覚悟だった。どのような結果が出ようと、その結果は自分が引き受ける。その結果がこれまでの野球人生に対する評価を根こそぎにしてしまうようなものであっても、それでよし。そう覚悟を定めてしまうと、人間は意外に身軽になれるものなんです。やるべきことをやる。人事を尽くして天命を待つ。素直にそういう心境に立てるのです。(N)

3.結果主義者とは違うプロセス主義者の強みです。尽くすべき人事は限りなく出てきます。それをやる。その向こうに確かな可能性を私は見ているんです。そこに自分を賭ける。大変なことかもしれないが、私はいま、すごく幸福ですよ。(N)

4.{人間は結果より過程でつくられる。}過程を一つひとつ大切にしていく。その中で選手が鍛えられる。私も進歩できる。(N)

5.監督業は{見つける}{育てる}{活かす}が根底にある。プロの原点とは羞恥心(しゅうちしん)だと思います。そんなレベルでプロとして恥ずかしくないか、人間として恥ずかしくないか、という思い。そういう自覚を養成し、人間形成をしていくのも、監督の努めである。(N)

6.平成10年の阪神タイガースの成績は、53勝82敗で最下位。勝ち負けの差は29。現在、年間135試合。これを3勝2敗のペースで戦えれば優勝し、逆に2勝3敗だと最下位になる。このわずかな差が問題なのである。将棋でもプロ棋士の力の差はほんのわずかでしかない。しかし、そのわずかな差をひっくり返すのが、大変なのである。(米長先生、以下Yと略す)

7.わずかな差を克服させるものは、ほんのわずかな気付きである。わずかなことに気付く。気付いたわずかなことをコツコツと積み重ねる。その営みが相手とのわずかな差となる。だが、それは隔絶した結果を招くのである。これは勝負の世界だけに限らず、人生すべからくそうなのではないでしょうか。そういう人に幸運の女神はしばしば微笑みかけるようです。(Y)

8.練習量が誰よりも多いものは、二流のレベルにはなれる。そこから先が問題である。壁に突き当たってそこでどうするかが、一流になれるか、二流のままかの大きな分かれ目である。(N)

9.同じレベル、同じ領域で女神が微笑んでくれるのは一度だけである。さらに女神に微笑んでもらいたかったら、レベルを変え、領域を変えなければならない。つまり、考え方を変え、自分が変わらなければならない。これが運についての原理原則である。(Y)

10.私は本来、不器用なので、とっさの対応が出来ないという欠点があり、打率が2割5分台であった。打率を3割にアップするためには、練習量がチーム一だけではダメなことに気付いた。それで努力の仕方を変えて、相手投手のデータの収集と癖の観察に力を注ぎ、この5分の差をうずめようとし、成功し、一流の仲間入りができた。(N)

11.努力は大切です。だが、やみくもに努力しても、幸運の女神はあまり微笑んでくれません。努力することは大切だが、肝心なのは、努力の方向、仕方を間違えないことです。そうすれば、一流の仲間入りをすることができるのです。(N)

12.すべての原因は自分にある。これに気付くかどうか。そうでなければ、一流など、はるか彼方です。(Y)

13.目的意識を明確にする。{自分はこれでいいのかな}と、ふと立ち止まって考えてみる。そういう素地がある人は、自分で気付く確率が高い。ギリギリに追い込まれた時のように、外からの刺激で否応なしに気付く場合もある。(Y)

14.若手棋士達にタイトルを席巻されたとき、中原永世名人は一部屋を借りてこもり、日常生活を遮断して研究し、復活した。それが彼には合っていた。私は逆に、若手と一緒に研鑽し、最年長で名人位を獲得した。(Y)

15.今まで色んな事に手を広げすぎたので、幸運の女神のとがめを受けた。今後は絞込み、体力も考慮して対局数も減らし、残りのタイトルに集中することに切り替えることを決断した。(Y)

16.火事場の馬鹿力を出させる根源は、貪欲さと負けず嫌いである。(N)

17.切羽詰ったギリギリの場に立っているという危機感、ハングリー精神が、人間を考えさせる根源です。人生に思いを致すとは、ハングリー精神の別の言い方である。ハングリーだと、いかに生きるかを考えざるをえません。(N)

18.時代が豊かになればなるほど、人間教育が重要なのだが、現実は逆になっており、これは由々しき問題である。人間教育の基本となるキーワードは{謙虚}である。謙虚さこそ、豊かな時代のハングリー精神であり、向上の機である。(N)

19.謙虚である利点は数多くあります。私は相手の強さを認めると、年下であろうと弟子であろうと、誰にでも教わりにいきます。(Y)

20.尊敬とは相手の優れている点を認め、自分の至らなさを自覚し、自分も尊敬される人になろうとすることです。そういう心の持ち方の原点になるのは、謙虚さにほかなりません。その謙虚さは、相手を尊称をつけて呼ぶ、礼を正すというように、形を整えることで培われます。(Y)

21.さまざまな戦法について研究し、知識や工夫を身につけるのは、単に戦法対策だけではなく、それらの上に立って、我慢することを覚えるためである。(Y)

22.勝負にとって不可欠なものは闘争心です。闘争心と我慢とのバランスをどうとるか。そのためには、勉強して、データを頭にたたきこんでおくことが必要です。(N)

23.たまたま結果がオーライなので、それを認めていくという結果主義では、真の強さは絶対にものにできません。(N)

24.意識変革は蝸牛の歩みのごとしです。だから、倦まず弛まずデータによる納得を繰り返すしかありません。私がデータ重視の野球を唱える真の眼目は、選手の意識改革にあるのです。(N)

25.データはわかりやすくなければなりません。わかりやすければ、納得できる度合いも高まります。納得すれば、感じて動くようになる。これが、感動です。人間は何によって変わるかといえば、それは、感動です。データは感動を呼ぶ素材でなければなりません。(N)

26.何の脈絡もなくひらめいたようなアイデアでも、あとになって考えてみると、ほとんどが根拠があることがわかります。。何度も咀嚼し、無意識の層にまで染み込んだようなデータ。それが何かの回路でつながって浮かび上がってくる。カンとはそういうもので、必ず根拠のあるものなのです。根拠のないカンはない。(N)

27.将棋の基本
a.自分で指す。できれば、強い人と指す。(自分で考えて答えをだす。)
b.強い人の将棋を並べる。調べる。
c.やさしい詰め将棋を早く解く訓練をする。(Y)

28.一つの道で一流になろうとするなら、好きというのは必須条件である。若い頃の一時期、自分が好きな対象に溺れるほどに熱中するのは、絶対に必要なことです。(N,Y)

29.羽生四冠王は毎日一時間は{詰むや詰まざるや}の詰め将棋をやって、6年間かかって200題を全部解いています。その結果、{毎日一時間でも詰め将棋をやることで、将棋に対する情熱を二十四時間燃やして、その情熱を何年間も持ちつづけることの大切さ}がわかった。一題一題解くことにより、そこで味わう喜びや感激を体験し、体の中に溜め込むことが重要である。(Y)

30.素質が一流でも、思想が二流では、伸びない。素質に恵まれたものは、逆に注意しなければならないのです。素質に恵まれた者の通弊は、考える行為が苦手なことです。何でも簡単にできてしまうので、考えようとしないのです。根本のところで、これでいいのだと思っていたりします。器用が一流への障害になるのです。(N)

31.戦力的に劣る球団が勝つためには、チームの意志統一は絶対の条件です。選手の意志をひとつの方向に統一するためには、その前に意識の改革を図らなくてはなりません。考え方を変えていかなくてはなりません。ミーティングはそのためのものです。(N)

32.反省は前に向ってするものです。結果の分析を前向きにやっているか、後ろ向きにやっているか。後ろ向きにやる結果分析には、{たら}{れば}が頻繁にでてきます。プロには{たら}や{れば}はない。事実を事実として、自己責任で、きっちり受け止め、未来へ活かすのが、前向きの反省である。(N,Y)

33.人の話を聞くことは、一流への道の一つである。できるだけ、リーダーの近くにすわれ。(N)

34.違う結果が欲しいなら、{違う考え方}をすべきなのです。{野球は頭のスポーツだ}というのは、このことなのです。何も考えないと、いつまでも同じことを繰り返し、根性や気迫が足りないという、どうどうめぐりになってしまうのです。進歩というのは、簡単に言えば、変わることなんだから、考え方を変えてみるところから始めるべきなのです。(N)

35.飛び抜けた人間の周りにいる人間が、どういう風に接していくか。尊敬して接するか。妬み、僻(ひが)みで接するか。そこにも一流と二流の差は出る。(Y)

36.ヤクルトの監督に就任したとき、最も大きな障害は、選手達が自分たちは勝てないと思いこんでいることだった。勝てないと思っていて、勝てるわけがない。この壁を突き崩すのには、結果を出すのが効果的です。蝸牛の歩みのごとく、しっこく、粘り強く、意識の改革を図っていくしかなかった。(N)

37.誰彼かまわずこきおろしたわけではありません。人をみて、使い分けました。(N)

38.優勝が二年間続かなかったのは、意識づけが本物ではなかったからである。集団はリーダーの器量以上のものには決してなりません。(N)

39.阪神の監督になって最初にミーティングのテキスト{野村の考え}(140ページ)をつくった。当たり前のことを当たり前に書いてあり、(社会科)(野球科)(技術科)(実践科)の4科に分かれている。

野球の技術に優れていることが、人生の幸福に結びつくためには、技術的な進歩も人間的な成長と並行していかないとだめなのです。

生きるための原理原則、世の中の原理原則を理解していないと、いくら野球の技術があっても、周りと調和して生きていけない。それは、結果として技術が向上しないのと同じことです。そもそも一流と二流の差は、ここから出てくるのだと私は考えています。

{知行合一}の精神が本当に大切ですね。(N)

40.人を動かす3つの方法。
a.利益を与えて動かす。
b.論理で動かす。
c.感情で動かす。(N)

41.ひとつの領域でとことんやってみる。それでだめだったら、方向を変えて徹底的に努力してみる。それでも結果が出ない時は、また違う努力の方向で限界までやってみる。そういうことをいくつも積み重ねて、初めて自分はこれまでだと言えるのです。そして、それだけのことをやったら、必ず突破口が見つかるものです。

それだけのことをやらないで、ただ何も考えないで、同じことを繰り返していただけで、自分はこんなものだ、などとは不遜というべきです。自分を限界づけてしまうのは、実は大変なことなのだ、ということを知るべきです。

技術に限界はあっても挑戦は無限です。これは自分の器量を少しでも大きくする戦いでもあります。それが自分を一段上のレベルに引き上げ、やがては一流にいたる道だと思っています。(N)

42.今後の私の目標は、少年棋士を育てながら、私自身も六十歳までにタイトルをとることを目指します。また、個人的に将棋界の情報発信基地になります。(米長先生)

43.阪神タイガースはわが最後の戦場です。私は今ここにいて、戦う場を与えられ、新しい挑戦に向っています。これを幸せといわなくてどうしましょう。(野村監督)

−−−−−−−−−−−−−−−

お二人の共通点を見てみると、

a.努力の達人(考え方を変えることの大切さと実行)
b.考える達人
c.あくなきチャレンジ精神
d.研究熱心・勉強好き
e.人間教育

というところでしょうか。さらに現在、新しい目標にチャレンジしている。その実行力には脱帽せざるをえません。日本も今行き詰まっていますが、各界のリーダーの方々にも参考にしていただく価値のある本だと思います。

旧態依然の枠組み、やり方を繰り返すのではなく、安全と衛生以外は規制を撤廃して、自由にやれる新しい方法、フィールドをつくらないと日本の輝かしい未来へとつながらないのではないでしょうか。

もうひとつ大切なことは、私達の現在の生活は、今までの国や地域の歴史の上に今日があるのだから、過去に対する感謝と、自らの中にある可能性を信じることだと思います。この感謝と自信が人々を謙虚さへと導き、一流の道への原動力となるのです。

Change your thinking and act differently.

【坂村真民詩集】

《 本気 》

本気になると
世界が変わってくる
自分が変わってくる

変わってこなかったら
まだ本気になってない証拠だ

本気な恋
本気な仕事

ああ
人間一度
こいつを
つかまんことには

【「幸福ニュース」無料購読申し込み 】

*あなたも メールマガジン「幸福ニュース」を購読しませんか。費用は、無料です。 下記に登録するだけで、E-MAILで毎月3回自動配信されます。

メールマガジン「幸福ニュース」登録

電子メールアドレス(半角):

メールマガジン「幸福ニュース」解除

電子メールアドレス(半角):

Powered by Mag2 Logo

幸福ニュース・バックナンバー

第67号 心の成長の軌跡

第65号 功徳行

第63号 豊かなるカンボジア

第61号 生きがいの本質

第59号 初めての介護体験

第66号 上司と部下

第64号 母の日

第62号 次郎長の命びろい

第60号 百年の計と子供

第58号 袖すり合うも他生の縁

幸福ニュース・全バック・ナンバー