1999年10月1日第77号
幸福ニュース

【 兎三題 】

今号は中秋の名月にちなみ、{兎三題}を川原英照著{竜神の説法}(かまくら出版)より送らせていただきます。

{焼身の兎}

インドのある処に、仲の良い兎と犬と猿とカワウソが住んでいました。昼はそれぞれの 場所で遊びますが、夜になると大木の根元の穴に集まって寝ます。

この兎が、いつも三匹の友達に向かって、

物を施すやさしさがないといけない。
生き物をむやみに殺してはいけない。
うそをいわない。
喧嘩をしない。
満月には、施しをする。

まるで、十善戒をそのまま教えていたのです。

そのようすを天上界から見ていた帯釈天さまが、{あいつは面白いことをいうが、本物かどうか試してやろう}という訳で、年老いたバラモン教のお坊さんに化けて、兎たちのところに来ました。そして、

{私は何日も食べていない、何か食べ物を恵んで下さい}といいました。

猿は、蓄えていた木の実を差し出しました。犬は野原を駆けて獲物を補らえ、カワウソ は川に潜って魚を捕まえてきましたが、いつも草しか食べない兎は、差し出す物がありません。そこで、辺りの枯れ草を集めて火を付けると、

{私には何もありません。この身を焼いて差し上げます}というなり、火の中に身を投げたのです。

すると途端に燃え盛る炎が消えて、そこに兎が座っていました。そして同時に、年老いたお坊さんが帝釈天に早変わりして、

{そなたの心底、確かに見とどけた、なんという素晴らしい奉仕の心であろうか、満月に兎の真心を描いて世の模範にしよう}

と言ったのが、お月さまに住む兎の伝説であります。そしてその兎は、お釈迦さまの前身であったと言われています。

{因幡の白兎}

はじめに{古事記}の記述を要約しますと、

・・・大国主命には八十神といって、大勢の兄神たちがいました。美人の八上売(やかみひめ)が、大国主命との婚約を知らしめたので、驚いた兄たちが、打ち揃って姫のもとへ行く途中、ワニザメに毛皮を剥がれた兎と出会います。そこで兄神たちは兎を揶揄して、{塩水で洗え}と教えます。兎は更に苦しみました。

遅れてきた大国主命は、その兎を哀れみ{真水で身を洗い、ガマの穂を敷いて静かに休むとよい}と論します。

無論、{古事記}には、意地悪な兄神たちのいじめと書いてあります。果たして、そうでしょうか。兄神たちが通りかかったとき兎は、さきに自分が騙したことをいわずに、サメに苛められたことだけを話すので、兄神たちも嘘を教えた。そして兎が前非を悔いているとき、大国主命が見えて、真水で洗うことを教わり救われたと、私は解釈しています。

なぜなら、意地悪な兄神たちとしたのでは、兎の反省はありません。また神さまや仏さまをそのように捉えて話すのは、よくないことです。世の中には、父親の厳しい{慈}と、母親の優しい{悲}の愛があることを知って貰いたいと思います。

物語を整埋してみますと、

騙してはいけない。
反省がなければ叱られる。
心を正せば救われる。

こうした教訓が、神話の意図するところではないかと思います。

{カチカチ山の兎}

物語りの概略は、

お爺さんが獲まえてきた狸を軒下に吊して{狸汁}にでもしようと、楽しみにしていました。そのとき、わらを打ちながら留守番をしていたお婆さんに、狸が{ナワを解いてくれたら仕事を手伝う}といって騙した挙句、お婆さんを殺して逃げました。

次に、兎が狸を山へ芝刈りに誘います。そこで狸の刈った芝に火をつけました。すると別の兎が、火傷した狸の背中を辛子で湿布するとよいと勧めて苦しめます。そして次の兎が、狸を泥舟に乗せて川へ沈めました。

なぜ突然、兎が現れるのでしょうか。
そこで私なりに考えますと、或るときお爺さんが、山で三匹の子兎を助けました。その兎たちが、狸に殺されたお婆さんの仇討ちをした。たとえば、蟹満寺の緑起にあります{蟹の恩返し}や、また{浦島太郎の伝説}などもそうですが、いわゆる動物の報恩感謝を連想させます。

最後に、物語りに理由を付けて、教訓めいたことを話すべきではないといいますが、真 意を知らなければ、何の意味もないことです。物語りには、それ相当の教訓と戒めがあるはずです。私なりに勝手な解釈をしますと、総じて兎の三話は、反省と感謝と奉仕を説いた教えであるといってよいでしょう。合掌

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【 起て!日本 】

渡部昇一、加瀬英明共著{起て!日本}(高木書房)より、お送りします。

1.(加瀬)イギリスのように精強な海軍でもって、海の堀であるドーバー海峡に当たる朝鮮海峡を守って、大陸に手を出さなければ、日本もよかったと思いますね。これは一つの教訓ですね。これからも、日本は大陸に深入りせずに、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国を中心とする海洋アジアと結ぶべきです。日本は大陸とあまりかかわり合いをもつべきじゃないし、親しくするべきじゃない。

2.(加瀬)もし、日英同盟が続いていたとすれば、日本では、海軍がリーダーシップをとり続けたでしょうね。陸軍を抑えることができたと思うんです。

(渡部)それに外交的に孤立しないから、カリカリすることがなくなったと思うんです。石油が断たれるということも全然ないんですから。

(加瀬)日本は大陸の国と結ぶとろくなことがない、という教訓ですね。その後、日本が進む道を誤り、ヒトラーが率いるドイツとの間に三国同盟条約を結んだことが、対米戦争を避けられなくした最大の要因ですからね。

3.(加瀬)日本はこれまで偵察衛星を持つことを、自ら自制して持たずにきた。他国に脅威を与えるような軍事力を持ってはいけないと言って、北朝鮮に攻撃を加える能力も、まったく持っていない。情報を集めることも、安全が侵されたときに脅威を取り除く力もまったくない。国家として存立する第一の要件である国防について、自主性を欠いているんですね。

4.(渡部、加瀬)税金は国に納めるものですね。国は決められた予算をその年のうちに使わなきゃいけないもんで、無駄使いするんです。だから、民間に金を置いておいたほうが、責任を持って使われます。国に金が集まるのは、浪費されますから基本的によくないことです。{みなのものは、誰のものでもない。}ということで、浪費の部分が多いわけです。相続税を廃止し、税金を10パーセントにせよ。

5.(加瀬)(上智大学のロゲンドルフ神父が日本に来て驚いたこと。)
{自分はヨーロッパから来たから、カトリックはカトリックだけが正しい。プロテスタントだったらプロテスタントだけが正しいと信じるのが当然だと思っていました。ところが日本に来て、神道と仏教とか、キリスト教をも加えて、三つとも受け入れている人もいた。日本人というのは、何と謙虚なんだろうか。自分はたった一つの見方が、絶対に正しいというのは、驕りだということに気がついた。カトリックだって、時代によって変わってきている。日本人のそういう謙虚なところは、近代的な文明観を持っていると言える。それが、日本の大きな長所だ。}

6.(渡部)われわれは本当に平等主義というのは、キリスト教だって仏教だってこの世ではできないことを知ってたんです。だから死んでからの平等なんです。ダンテがいみじくも言ったように、{地獄への道は善意をもって舗装されている}と。

7.(加瀬)私は日本は素晴らしい国だという認識を、復活しなければいけないと思います。世界中で、自分の国をいい国だと思っていない国は、日本だけじゃないですかね。他にあるでしょうか。この二十年、三十年、日本の首相が日本はいい国だから誇りを持つべきだと言ったことが、一回でもありますか。

8.(加瀬)福沢諭吉先生は独立自尊という言葉を残しているけれども、二つの言葉から成り立っている、{独立}と{自尊}とどっちのほうが大切なのだろうか、と訝りました。そして{自尊}だと思いました。自らを尊べば、国家も個人も自ずから独立しますね。

今日の日本が本当に独立できないでいるのは、自らを尊ばないからです。どんな国だって、長い歴史の間には光と影があるものです。しかし、日本の歴史を見れば光のほうが圧倒的に多い。世界のなかでも、輝かしい国家ですよ。もっと光の部分を見て、自らを尊ぶことが必要だと思うんです。

(渡部)国民に自尊の心を持たせることが、義務教育の最大目的だったはずなんですけどね。それが逆になっているところが多いのが、大問題です。

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仏教の考えには{絶対}ということはありません。仏教は、いうなれば、状況によって変化する相対性理論ですし、多元論なのです。情報源を複数持ち、常に複数の観点から多角度で考えるのが、仏教の思考方法ではないかと思います。

世界情勢も大きく変わり、戦後日本の諸制度も金属疲労をおこしています。仏教の{空}の考えからすれば、ゼロ・ベースですべてを考え直し、21世紀の新しい日本国像を創り、憲法改正等も行い、未来や現状に合わせた新しい日本をつくる時期に来ているのかもしれません。

戦場で実際に玉の下をくぐった方々は皆、{二度と戦争はしたくない}と言います。しかし、3世代たつと忘れ去られて、また戦争が始まるのが、人類の歴史のようです。人間の業なのでしょう。自分の国を守り、なおかつ世界平和に具体的な貢献のできるような国づくりをすすめる必要があるのではないかと思います。

【坂村真民詩集】

《 子らのために 》

二十一世紀に生きる子らのために

わたしはわたしの願いを書いておこう

東西の文化が

この列島に流れ寄り

混融和合して

新しい光と命とを産む

母胎の国であることを

そして天地創造の

大いなる使命を持って

いにしえから作られた

付託の国であることを

これからこの国を受け継いでゆく子らに

このことをはっきり告げておこう

【仏語集】

『秘密曼荼羅十住心論』(弘法大師)

{それ宅に帰るには必ず乗道(じょうどう)に資(よ)り、病を癒すには会(かなら)ず薬方に処る。病原巨多(こた)なれば、方薬非一なり、己宅遠近(おんごん)なれば道乗千差(せんじゃ)なり。四百の病は四蛇(しじゃ)に由って体を苦しめ、八万の患(わづらひ)は三毒に因つて心を害す。身病多しといへどもその要は唯し六つのみ、四大鬼業(きごふ)これなり。心病衆(おほ)しといへどもその本は唯し一つのみ、いはゆる無明(むみょう)これなり。}

(現代語訳)
そもそも家に帰るには、かならず車と道とによる。病気を治すには、かならず薬と処方とが必要である。病気になる原因は無数であるから、治療のための薬も一種ではありえない。家に帰るのにも遠かったり近かったりするから、道も車も千差万別ということになる。

四百もある病気は、地・水・火・風の不調がもとで身体を苦しめ、八万もの煩悩は、貪(むさぼ)り、瞋(いか)り、癡(おろか)さがもとで心をそこなう。身体の病は多いといっても要はただ六種である、地・水・火・風の不調と悪霊などのたたりと業(ごう)の報いとである。心の病も多いといっても、その原因はただ一種、すなわち根源的な無知〔無明〕である。

(空海全集、筑摩書房)

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第73号 願いをかなえる法

第71号 あなたの価値はいくら?

第69号 本当の幸せとは?

第67号 心の成長の軌跡

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